最新記事
シリーズ日本再発見

渋谷の再開発「続々と超高層ビル誕生」の足元で起こる変化

2019年03月29日(金)16時25分
井上 拓

渋谷スクランブルスクエア第I期(東棟)SHIBUYA SKY 俯瞰イメージ Photo:渋谷駅街区共同ビル事業者

<渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエアなど「100年に1度」と言われる渋谷駅周辺の再開発。渋谷はどう変わるのか。そして、工事現場だけ見ていても分からない、他のまちづくりと異なる特徴とは>

「100年に1度」と言われる大規模な再開発が、東京の渋谷駅周辺で進んでいる。昨年9月には高さ約180メートルの大規模複合施設「渋谷ストリーム」が開業。今秋にはその渋谷ストリームを超える高さ約230メートルの「渋谷スクランブルスクエア第I期(東棟)」が開業し、その後、2027年度まで都市再生プロジェクトが目白押しだ。

これから渋谷はどう変わるのか。それが東京全体、あるいは日本全体にどんな影響を及ぼし得るのだろうか。

japan190329shibuya-2.jpg

渋谷駅周辺航空写真(2017年6月撮影) Photo:東京急行電鉄株式会社

japan190329shibuya-3.jpg

2027年度頃の渋谷駅周辺のイメージ (上空よりのぞむ) Photo:東京急行電鉄株式会社

カギを握るのは、まずは東急グループだろう。例えば東京都心の東側、東京駅周辺地区は現在、三菱地所と三井不動産が競い再開発を進めているが、ここ渋谷は歴史的にも東急グループが牽引し、「まちづくり」をしてきた街と言える。

1885(明治18)年、日本鉄道品川線(現・JR山手線)の開通により渋谷駅が誕生。明治後期から昭和戦前にかけて、複数の電車・バス路線が乗り入れを開始するようになり、ターミナル駅化が進んでいった。

1932(昭和7)年、渋谷町から渋谷区に。翌々年には、東日本初の私鉄直営のターミナルデパート「東横百貨店」(後の東急百貨店東横店東館)がオープンし、乗降客数の増加とともにさらなる発展を遂げていく。

副都心と位置づけられるようになったのは戦後になってからだ。戦災復興の中で、新宿や池袋と並び、東京の重要な開発エリアの1つになった。当時の背景としては、東側に重点都市があった東京で、都市構造的な交通インフラの延伸など、西地域に戦略的な発展性を見込まれたことが大きい。

映画館やプラネタリウムを有する総合文化施設「東急文化会館」をはじめ、戦後は新しいランドマークとなる施設が続々と開業していく。70年代にはNHKが神谷町から渋谷に移転、パルコが進出し、ファッションコミュニティ109(現・SHIBUYA109)が誕生するなど、企業の推進力によって、駅周辺だけでなく広域圏に拡張しながら、東京の文化的拠点の意味合いを強めていった。

90年代以降、渋谷発のポップミュージック「渋谷系」、コギャル、ガングロ......など若者カルチャーを牽引する流行発信拠点へ。2000年代になると「ビットバレー」と称され、IT企業やスタートアップが集積して、大手町や丸の内などとは異なるオフィス街の様相を呈するようになった。

100年のあゆみの中で、さまざまな機能と役割を持ち、日本を映す鏡のような街に変化を遂げていった渋谷。毎日50万人が行き交うスクランブル交差点が暗喩するかのように、その魅力として想起できるのは、多層的で多様性に富んだカルチャーと言えるだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中