最新記事
シリーズ日本再発見

日本各地のマラソン大会が「外国人ランナー歓迎」の理由

2018年04月27日(金)11時50分
井上 拓

事例に見る、マラソンと観光資源の再発見

国内で最も多くのインバウンドランナーが参加している大会と言えば、「東京マラソン」になる。外国人参加者数(大会公式プログラムより)は、2015年5317人、2016年6456人、2017年6258人と群を抜いた人気だ。

2018年は90の国と地域から参加、主な国・地域別ランキングは、台湾1049人、中国1011人、アメリカ805人、香港663人、イギリス397人となっている。

参加動機には、マラソンの「グランドスラム」である、世界6大メジャーマラソン「アボット・ワールドマラソンメジャーズ」対象大会であることも大きいだろう。

他に、準エリート(国外)基準を設けた「RUN as ONE」というプログラムで、海外からもより高いレベルのランナーが集まるようにしたり、ファンランを楽しむ海外のランナーとの交流を目的としたイベント「フレンドシップラン」を実施するなど、エリートランナーと市民ランナーが同居でき、様々な層を満足させる取り組みが用意されている。

「東京マラソンEXPO」の開催や多言語対応ボランティア、ピクトグラムの導入をはじめ、受け入れのサービスクオリティも海外から高い評価を得ている。

都市型マラソンのメリットである交通面でも応援する家族や友人が参加しやすくなっており、コース上の観光名所をエリア別に紹介した見所マップ(英語版もある)の配布等、地域との連携が進んでいる。訪日スポーツツーリストの消費行動も生まれやすい設計だ。

さらには、2017年からフィニッシュ地点が東京駅前の行幸通りに変更となり、象徴的なフィニッシュシーンの背景がインスタ映えする東京駅舎となったことをはじめ、SNSを通じて東京観光名所の魅力を世界中に発信、国外PRが効果的に生み出せるようにもなった。

過去2度、筆者が参加したことのある沖縄の「NAHAマラソン」も、インバウンドランナーが多い大会の1つ。2013年頃まで外国人ランナーは300~400人ほどの横ばいで推移していたが、2014年に過去最高の1132人を記録してからは、800~1000人規模の高い水準を維持している。

NAHAマラソンの参加目的に考えられるのは、大会前後でツーリズムを楽しめる、自然環境やホテル、食事をはじめ、リゾート観光資源が備わっている点があるだろう。

大会中もコース上から途切れない沿道の応援、名物バンドの演奏やダンス、黒糖やサータアンダギーをはじめ名産品を振る舞う私設エイドの充実......と、沖縄らしいもてなしによって、お祭りのような特殊な体験ができる。市民ランナー向けの適度なユルさもあって、地域の人たちとの交流も生まれやすい。

インバウンドが増えた要因について、NAHAマラソン協会に話を聞いたところ、大半を占めている台湾とのランナー交流も背景にあるという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ネクスペリアに離脱の動きと非難、中国の親会社 供給

ビジネス

米国株式市場=5営業日続伸、感謝祭明けで薄商い イ

ワールド

米国務長官、NATO会議欠席へ ウ和平交渉重大局面

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 運
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中