最新記事
シリーズ日本再発見

日本人が知らない、中国人観光客受け入れの黒い歴史

2017年09月02日(土)15時33分
中村正人(インバウンド評論家)

配車アプリサービスは、土地勘がない海外で大きなスーツケースを抱えた旅行者ほどニーズが高い。家族連れや小グループの多い最近の個人客にとって、タクシーより一度に多くの人や荷物を乗せられるワゴン車は使い勝手がいい。同じ理由でホテルより民泊が支持される。中国の個人客のニーズにとことんマッチしているのだ。

いま起きているのは、2000年代のように利益が出ないから仕切りを明け渡したという話ではない。いわんや、中国客のマナーの話でもない。彼らは自前の進んだシステムを手にしており、それが越境して日本国内の現行ルールに抵触するというケースなのだ。

【参考記事】日本「民泊」新時代の幕開け、でも儲かるのは中国企業だけ?

今夏、南欧で増え過ぎた観光客に地元が苦慮する問題が報じられたが、そもそも誰のための観光客誘致なのか。日本でも同じことが問われるだろう。

インバウンド旅行市場にとって「経済効果のリーケージ(漏出)」をどう考えるかは重要だ。中国からのクルーズ船が大量に寄港する九州では、上陸客に対する市民の関心は低いという。それは「闇ガイド」や「ブラック免税店」の関係が知れ渡り、彼らの営業活動に「場貸し」しているだけで、地元にお金が落ちず、経済効果は持ち去られている(=漏出)と市民が薄々気づいているからだ。

グレーゾーンこそ水を得た魚とばかりの彼らの現況を野放しにしたままで、日本のあるべきライドシェアの未来を描けるのか、という懸念もある。来年の「民泊新法」施行後に予測される海外在住オーナーの「違法民泊」をめぐる市場の混乱も気がかりだ。

こうした問題は中国客が押し寄せる国ではどこでも起きている。どの国も経済効果を手に入れたいが、ジレンマがあることでは共通している。

日本の観光行政はこのまま事態をなりゆきに任せていいのか。観光立国と呼ばれる欧州やアジアの国々に比べ、ルール作りの意思が欠けていたのではないか。

状況を少しでも変えるには、海外の市場の変化や先進的なサービスへの理解が欠かせない。優れたところは取り入れ、ルールの見直しも検討すべきだが、同時に相手国とのルールの確認や取り決めも、いまとなっては必要だと思う。

少子高齢化が進む日本のこれからのインバウンド旅行市場は、いかに外国客に国内の多様なインフラを活用してもらうかがカギといえる。まずはいま何が起きているかを知るべきだろう。

【参考記事】中国人の欲しい物が変わった――アリババ越境ECトップ訪日の理由

japan_banner500-season2.jpg

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米上院、国土安全保障省向け予算否決 移民取り締まり

ワールド

トランプ政権、温室効果ガス規制の法的根拠撤廃 「米

ビジネス

PayPay、米ナスダックに新規上場申請 時価総額

ワールド

トランプ氏、ベネズエラと「並外れた」関係 石油富豪
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中