「日本はWi-Fi後進国、外国人が困っている」に異議あり!
通信環境は多様化し、旅行客はWi-Fiだけに頼っていない
日本=フリーWi-Fi後進国説の論拠のひとつは、昨年1月に総務省と観光庁が発表した報告『訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査』2015年度版だ。日本各地の空港、港湾で約1万人の訪日外国人観光客にアンケート調査を実施したところ、旅行中に困った点として「無料公衆無線LAN環境」が46.6%の回答を集め1位となった。
「やはり日本はフリーWi-Fi後進国だった!」と結論づけるのはまだ早い。今年2月に発表された2016年度版では回答率は28.7%にまで低下し、「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」に次ぐ2位となっている。
日本のフリーWi-Fi環境の整備が進んだことが要因だろうが、新たな技術・サービスの普及も大きそうだ。2016年度版の「通信手段の利用実態」という設問では、無料公衆無線LAN 53.8%、モバイルWi-Fiルーター 33.8%、国際ローミング 26.2%、SIMカード 20.9%という結果になった。この調査結果にはホテルでのフリーWi-Fi利用が含まれていることを考えると、出先での通信手段はすでに多様化していることがうかがえる。
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今後大きく伸びそうなのがトラベラーズSIMだ。日本人の海外旅行者もSIMフリー携帯の普及に伴い旅行先でのトラベラーズSIM購入を検討する人が増えているが、同様に日本国内でも、外国人向けのトラベラーズSIMの販売が充実してきた。滞在期間が長い場合には他の通信手段よりもかなり安価になる点がメリットだ。日本国内で販売されているほか、海外でも販売されている。
中国の大手ネットショッピングモール「タオバオ」では「日本上網カード」(ネット接続カード)「日本電話カード」の名称で多数の出品がある。安いものでは20〜30元(数百円)という信じられないような価格の製品まで出品されている。
また、WAmazing株式会社(東京)は今年1月、8日間で500MBまで無料で使える訪日外国人客向けのアプリサービス「WAmazing(わめいじんぐ)」をリリースした。まず出発前にウェブで登録し、成田空港でSIMを受け取るという手続きになっている。データ容量は少ないものの、ついに無料のSIMまで登場したわけだ。
タオバオでトラベラーズSIMを販売している合同会社エンドレススカイ(横浜)代表社員の増山智明氏は、過当競争が続く中で価格が下落しており、今後さらなる需要拡大が見込まれると話している。
一方で、トラベラーズSIMにも課題はあるという。旅行前に購入するか、空港で入手できればいいが、日本に入国してしまうとどこで買えるかわからないと困ってしまう外国人が多いのだ。増山氏は「どこで買えるんだと私に問い合わせが来ることもありますよ(笑)。現在は家電量販店などで販売されていますが、コンビニなど販売場所を拡大することが必要になると思います」と言う。
フリーWi-Fiがないよりもあったほうがいいのは当然だが、技術の進歩に合わせた柔軟な対応が必要だ。せっせと「フリーWi-Fi先進国」を目指して整備を進めていても、気づけば「トラベラーズSIM後進国」になっているようでは意味がない。
技術革新のスピードに合わせ、旅行者のニーズに応じた「おもてなし」を提供することが求められている。