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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
2トップの国の知られざるあの人
忘れられがちだけど、ドイツは常に2トップでいっている。......サッカーの話ではない。国のリーダーのことだ。
6月30日の選挙で、ドイツのリーダーが決まる。アンゲラ・メルケル首相が退陣するわけではない。新たに決まるのは、もう一人のリーダー、大統領選の方だ。
ホルスト・ケーラー大統領が突然の辞任を表明したのは5月末のこと。ドイツの経済的利益を守るためには他国に軍事介入をすることも必要だ、という発言が国内で大バッシングを受けたためだ。新たに行われる大統領選で、最有力候補はキリスト教民主同盟(CDU)などの連立与党が擁立したクリスチャン・ウルフ(CDU副首相でニーダーザクセン州の首相)らしい。
ドイツ大統領、と聞いて即座にピン、と来る人はそう多くないのでは。メルケル首相ならすっかりおなじみだが、そもそもドイツに大統領がいることさえ忘れがち。今回の大統領選も(ドイツ以外では)ほとんど話題になっていない。
それもそのはず、ドイツの大統領は選挙といっても連邦議会議員らによる連邦会議の投票によって決定する。アメリカやフランスのように国民投票で選ばれる大統領ではない。さらに、ドイツ大統領の役割はごく象徴的なものにとどまり、法律に署名したり外交の場に出席したり、という程度で、実権は首相が握っている。
そもそも、首相と大統領が両方いる国はけっこう多いが、どちらが何をやっているのかというと、実はよく分かっていなかったかも。国によって両者の権限や関係はさまざまだが、2トップ型の国々を2つに分類すると......。
タイプ1 首相優位型
ドイツ、イタリア、イスラエルなど。大統領は議会の会議によって選出され、政治的権限をほとんど持たない形式的な存在なのに対し、首相は議会で指名され、行政を統括して権力を握る。ちなみに首相の影で存在感は薄いが、イタリア大統領はジョルジョ・ナポリターノ、イスラエル大統領はシモン・ペレス。
タイプ2 大統領優位型
フランス、韓国、ロシア、ウクライナなど。大統領は国民の直接投票で選ばれ、強い権限を持つのに対し、首相(韓国の場合は国務総理)は国会の同意を得て大統領が任命する。首相は大統領を補佐して行政機関を統括するのが役割で、権限は限定的(ただし、ロシアの場合は話が別かも)。大統領ばかりが目立つが、フランス首相はフランソワ・フィヨン、韓国国務総理は鄭雲燦(チョン・ウンチャン)、ウクライナ首相はアザーロフ・ミコラ。
2トップの「影の薄い方」が、突然思わぬ注目を集めることもある。少なくとも「もう1人リーダーがいる」くらいは頭に入れておいた方がいいかも。
――編集部・高木由美子
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