- HOME
- コラム
- From the Newsroom
- 捕鯨は法廷で白黒付ければいい
コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
捕鯨は法廷で白黒付ければいい
日本の捕鯨をめぐる議論はとうとう法廷に持ち込まれた。
オーストラリア政府は5月31日、オーストラリア南方の南極海で日本が行っている調査捕鯨の停止を求めて国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。日本の調査捕鯨が「実際には商業捕鯨にあたり、国際捕鯨取締条約に違反している」と主張している。
ところが同じく捕鯨反対の立場を取る他の国々はオーストラリアの提訴に同調していない。アメリカ政府の国際捕鯨委員会代表は、豪シドニー・モーニング・ヘラルド紙の取材に対して「もしオーストラリアが裁判で負ければ、他の反捕鯨国すべても負けることになる」と豪政府の動きに懸念を示し、米政府は外交交渉で捕鯨問題の解決を図っていくという考えを示した。
やはり捕鯨に反対するニュージーランドのジョン・キー首相も「オーストラリアの提訴にニュージーランドが加わってもおそらく負けることになる」と、提訴への参加には消極的だ。
そもそも今回の動きには、総選挙を前にして支持率を落としているオーストラリアのラッド政権が、捕鯨反対の国民感情に訴えて支持率を回復させる狙いがあったと見られている。野党陣営からは「政権が抱える問題点から目を逸らそうとしている」と批判される始末。
ただ、もし日本政府が調査捕鯨の合法性に自信を持っているなら、きちんと法廷に出て主張すればいい。例え法的拘束力がなくてもICJで判決なり勧告的意見なりが出されれば、日本は感情的な捕鯨批判に胸を張って反論できる。
もし仮に捕鯨を止めろという判決が下ったら、その場合は国際ルールに従うしかない。それでも、まるで日本が国際条約の抜け穴を利用して「姑息に」捕鯨を続けているというイメージを持たれるよりは、はるかに国益にかなうはずだ。
――編集部・知久敏之
この筆者のコラム
COVID-19を正しく恐れるために 2020.06.24
【探しています】山本太郎の出発点「メロリンQ」で「総理を目指す」写真 2019.11.02
戦前は「朝鮮人好き」だった日本が「嫌韓」になった理由 2019.10.09
ニューズウィーク日本版は、編集記者・編集者を募集します 2019.06.20
ニューズウィーク日本版はなぜ、「百田尚樹現象」を特集したのか 2019.05.31
【最新号】望月優大さん長編ルポ――「日本に生きる『移民』のリアル」 2018.12.06
売国奴と罵られる「激辛トウガラシ」の苦難 2014.12.02