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コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
坂本龍馬が目指した「抑止力」
連休中長崎を旅行したら、空港は龍馬人気にあやかった「龍馬定食」や「龍馬カステラ」といった関連商品であふれていた。
沖縄の米軍普天間基地の移設問題を含め、民主党政権の外交姿勢が問われているこの時期に、明治維新に活躍した坂本龍馬が脚光をあびているのはちょっと面白い。
5月2日に放送されたNHKの大河ドラマ『龍馬伝』の第18回「海軍を作ろう」で龍馬は、幕府の海軍塾を開いた勝海舟にこんなことを言っている。「西洋に負けない強い海軍を作れば、日本が攻められることはない。戦争をしなくても日本を守ることができる」 要するに海軍が「抑止力」になるという見方だ。
当時、イギリスをはじめとする西洋諸国がアジアに進出していたことを考えれば、龍馬が抑止力として海軍の増強を目指したことはうなずける。その後日本は、西洋に追いつけ追い越せと「富国強兵」の道を歩んだ。龍馬の海援隊を引き継いだ帝国海軍は、維新から数十年後の日清戦争、日露戦争の時代にはもう「抑止力」とは呼べないだろう。
鳩山首相の「抑止力」発言が波紋を呼んでいる。沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題で、今月に入って「海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった。学べば学ぶほど(海兵隊が)連携して抑止力を維持していることが分かった」と語り、「今更そんなことを」と批判されている。
沖縄の米軍基地は何のための「抑止力」なのか。朝鮮半島、台湾海峡の有事にどんな役割を果たすのか。なぜ沖縄になくてはならないのか。これまでうやむやだった問題を議論するいい機会かもしれない。ただ国民がそれを咀嚼して受け入れるには、5月中のタイムリミットは短すぎる。
――編集部・知久敏之
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