コラム

サルコジW不倫騒動のお粗末バトル

2010年04月07日(水)11時00分

 フランスのサルコジ大統領夫妻がW不倫疑惑、との話題がヨーロッパのメディアを騒がせたのはつい数週間前のこと。サルコジの相手は環境相で空手の国内チャンピオンでもあるシャンタル・ジュアノ、奥さんのカーラ・ブルーニが夢中になっているのは有名歌手のバンジャマン・ビオレ、と、ちょっと聞いただけでも嘘くさい話に尾ひれがついて広がった。噂の出どころはオモシロ半分のツイッターの記述だったという。

 あまりのばかばかしさにコメントする価値もない、とマスコミの追及にも無視を決め込んでいたサルコジだが、イライラしていたことは間違いない。先日、サルコジは「根も葉もないうわさを広めた」としてある人物に報復措置(!)を取ったという。その人物とは、サルコジ政権のスター閣僚だったラシダ・ダティ元司法相だ。

 ダティはモロッコ出身の父親とアルジェリア出身の母親の間に生まれた移民2世。ヨーロッパ系以外の移民としては初めての入閣で注目を浴びたので、若くて写真栄えする黒髪のダティに見覚えのある人も多いだろう。その後も強引な手法で司法改革を進めたり高価なオートクチュール好きで批判を集めたり、と話題には事欠かなかった。09年には父親が誰かを明かさずに独身のまま女児を出産、その5日後に公務に復帰して物議を醸した。ダティを重用したサルコジも次第に彼女を疎ましく思うようになったようで、ダティは09年6月の欧州議会選挙への出馬をきっかけに司法相を辞任した。

 そのダティが、W不倫騒動の噂の元凶だとサルコジは決めてかかったらしい。英デイリー・メール紙によれば、3月14日、仏地方選挙の第1回投票で与党惨敗のニュースを見ていたサルコジは、テレビでダティがサルコジ批判をするのを目にし、不倫騒動の件での疑惑も相まって怒りを爆発させたという。その場で警視総監に電話をかけ、今すぐダティから運転手付き公用車と公費のボディーガードを取り上げろ、と命令した。まだテレビ局のスタジオにいるうちに命令を受けたボディーガードの1人は、ダティにこう言ったという。「すみませんマダム、帰らなければいけないんです――上からの命令で」。

 信憑性のかけらもなかった噂も噂だが、サルコジの対応も小さい。根も葉もないW不倫のストーリーは、ものすごく低レベルな形で終結したようだ。

――編集部・高木由美子

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