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コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
カチンスキは王か英雄か商売の種か
4月10日に不慮の飛行機事故で亡くなったポーランドのレフ・カチンスキ大統領の葬儀が17日に行われる。現職の大統領が事故死、しかも歴史的な事件の追悼式典に向かう途中、さらには同乗した夫人や政財界の大物も多数死亡、と国家を揺るがす悲劇の要素は満点なのに、なんだか少し嫌な感じの論争が起こり始めた。
葬儀の翌日、カチンスキ夫妻はポーランド南部の都市クラクフにあるバベル城に埋葬されることが計画されているが、これに国民が大反発しているらしい。バベル城が、国王や英雄などを埋葬する特別な場所だからだ(デイリー・テレグラフによれば、「イギリスの首相がウェストミンスター寺院に埋葬されるのに匹敵する」)。悲劇的な死とはいえ、人気もなかった大統領を神聖な場所に埋葬するな、とワルシャワやクラクフでは抗議のデモが繰り広げられ、SNSのフェースブックには反対派の支持者が3万人以上集まっている。
確かに、ここ数ヶ月のカチンスキの支持率は約30%と低迷し、次の大統領選では敗戦が濃厚だった。そんなカチンスキを国王と同列に扱うことに批判の声が高まり、ポーランドは分裂の危機にあるという。
生前は不人気だったカチンスキだが、その悲劇で一儲けしようとする動きも盛んになっている。事故から数時間後にはカチンスキTシャツやカチンスキ夫妻の写真入り時計などが作られ、好調な売れ行き。17日の葬儀にはオバマ米大統領やニコラ・サルコジ仏大統領、アンゲラ・メルケル独首相ら世界中から大物が集うが、クラクフのホテルの中には宿泊料を大幅アップして儲けを狙っているところもあるという。
支持率が伸びず、次期選挙で静かに退陣するかに思われた大統領だが、静かに眠りにつける状況ではなくなっているみたいだ。
――編集部・高木由美子
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