コラム

「地球温暖化を最も恐れているのは中国国民」と欧州機関の意識調査で明らかに...その3つの理由とは?

2024年06月28日(金)18時45分
大雨で冠水した重慶市の道路

大雨で冠水した重慶市の道路(2020年8月19日) dyl0807-Shutterstock

<国民が温暖化に高い関心を示す理由の一つには、実際にその被害に遭いやすいことが挙げられる>


・欧州投資銀行が行った意識調査によると、「生活を最も脅かす原因」として地球温暖化をあげた回答者は中国で73%にのぼり、アメリカやEUと比べても高い水準だった。

・温暖化への警戒とその対策を重視する傾向が中国で強い大きな背景としては、実際にその被害に遭いやすいことが考えられる。

・ただし、それに加えて、温暖化対策を進めることが共産党公認のスローガンであること、そして環境対策が経済成長につながることへの期待があることも無視できない。

温暖化をめぐる中国世論

欧州投資銀行は昨年、アメリカ、EU、中国で行った、地球環境問題に関する意識調査の結果を発表した。

それによると「生活を最も脅かすのは」という質問に対して、 “地球温暖化” と回答した割合が中国では73%にのぼり、アメリカ(39%)やヨーロッパ(47%)を上回った。

ちなみにそれ以外には “失業” 、 “健康と医療サービス” などの選択肢があったが、中国ではこのうち “温暖化” が他の二つ(それぞれ47%、33%)を上回った。

ヨーロッパでも “温暖化” が他の二つ(どちらも39%)を上回ったが、その差は8ポイントにとどまった。これに対して、中国のそれは20ポイント以上だった。

この結果を踏まえて欧州投資銀行は「地球温暖化を最も恐れているのは中国人」と結論した。

この調査結果に違和感を感じる人もあるかもしれない。

スウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥンベリ氏は2021年、中国がいまや世界最大のCO2排出国になったのに環境対策が進んでいないと批判し、「相変わらず開発途上国」と評した。


とすると、この意識調査の結果とは矛盾があるようにもみえる。

しかし、政策レベルでの進展と国民レベルの意識は、本来別のものだ。

中国の一般世論が温暖化に高い関心を示すことには、大きく3つの理由が考えられる。

実際に悪影響が出ているから

第一に、中国で地球温暖化の悪影響が広がっていることだ。

異常な熱波、干ばつ、大雨、洪水など、地球温暖化の影響とみられる異常気象や災害は世界各地で増えていて、それに比例して人的被害はもちろん、建造物やインフラの破壊、農作物の損耗といった経済被害も増えている。中国もその例外ではない。

特に目立つのが洪水だ。中国では河川の氾濫が2011年段階で1カ月あたり6~8回記録されていたが、2022年には130回を超える月さえあった。

また、2023年の夏には各地の気象台で観測史上最高気温を記録し、それに比例して全土で家畜の死亡が相次いだ。

こうした災害による経済損失について、北京大学の研究グループは、現状のペースで増え続ければ2100年までにGDPの4.23%にまで増えると試算している。

とすると、中国ではいわば差し迫った脅威として地球温暖化が認識されやすくても不思議ではない。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

メキシコ大統領、米国の内政干渉拒否 ベネズエラ攻撃

ワールド

デンマーク首相、トランプ氏のグリーンランド構想を一

ワールド

マドゥロ氏が無罪を主張、麻薬テロなど巡り 米で初出

ワールド

米副大統領の自宅に何者か侵入試み、男拘束 バンス氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 3
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    スペイン首相、アメリカのベネズエラ攻撃を「国際法…
  • 5
    野菜売り場は「必ず入り口付近」のスーパーマーケッ…
  • 6
    ベネズエラ攻撃、独裁者拘束、同国を「運営」表明...…
  • 7
    顔も位置もDNAも把握される――米国で現実化する「SF級…
  • 8
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 9
    中国生成AIの限界...ディープシーク後に見えた米中の…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story