岸田政権が資金を多く提供した上位5カ国はどこか──「バラまき外交」批判を考える
第2位 イラク
第2位は中東のイラクだ。提供額の8割以上に当たる約2,030億円は、バスラ製油所の改良計画に当てられている。
BPによるとイラクの2021年の原油生産量は約2億トンで世界第5位だった。
しかし、イラクでは設備の老朽化や治安悪化などで原油生産にブレーキがかかっている。つまり、そのポテンシャルは現状より大きいと見込まれている。
一方、日本の原油輸入に占めるイラクの割合は現在0.1%にとどまる。裏を返せば、イラクの石油生産へのテコ入れは、資源市場が不安定ななかでリスク分散を図ることにもなる。
第3位 インドネシア
第3位のインドネシアには約2,000億円が提供されたが、このうち1,300億円程度は首都ジャカルタ周辺での道路、鉄道整備などに、436億円はアチェなどでの発電設備の拡充にあてられた。
もともとインドネシアは冷戦時代から日本が東南アジアのなかでも特にテコ入れしてきた国の一つで、近年では日中間の高速鉄道受注レースの舞台にもなった。
東南アジア最大の経済規模と人口を抱えるインドネシアは、2026年にGDPでロシアを抜いて世界6位になるという試算もある。
この国でのインフラ建設に高い優先順位をつけられたことは、日本政府が東南アジアで中国とのレースを重視していることの表れともいえる。
第4位 インド
第4位のインド向けのうち約75%は、パトナでのメトロ建設などのための1,268億円で占められる。
これまでに触れた「中国を意識した資金協力」という意味では、インド向けの資金協力はその典型といえる。
インドは2021年にイギリスを抜いてGDP世界第5位になったが、日本との取引額もこの10年間でほぼ倍増している。
中国に代わる有望な投資対象の一つとして、さらに日本と同様に中国の海洋進出を警戒する点でも、日本政府が高い優先順位をつけて資金協力を行うことは不思議ではない。
第5位 ウクライナ
第5位のウクライナについては多言を要しないだろう。
2022年2月に始まったロシアによる軍事侵攻の後、アメリカはじめ各国から支援が集まったが、昨年10月までの提供額で日本は第5位である。
日本政府は2023年、復旧、人道支援などに793億ドルを提供した。
外国に「あげた」のは歳出の0.2%程度
以上の上位5カ国に提供された金額の合計は、2023年の総額の7割以上を占める。
その多くは、サプライチェーン構築、資源の調達、中国への対抗などで重要度の高い国だ。つけ加えれば、インフラ建設などには多くの日本企業も参画している。
つまり、対象国の選定には日本自身の利益や目的が色濃く反映されている。
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