コラム

放送法「行政文書」問題が浮き彫りにする日本の封じ込め体質──内部告発は悪か

2023年03月09日(木)18時45分

内部告発者を守らない日本

ただでさえ日本は国際的にみて内部告発者を守らない国だ。

日本の公益通報者保護法は、公的機関や民間企業の内部で行われている不正を、内部の努力で改善されない場合に告発することが権利として認められている。

ただし、内部告発者を実質的に保護する仕組みはない。

この法律では内部告発を理由とした解雇、派遣労働者契約の解除、その他の減給、降格といった不利な扱いは無効と定めているが、役所や企業の「犯人捜し」や報復人事を規制する罰則規定はない。

例えば、欧米の多くの国では内部告発者の減給・降格などが「報復人事でなかった」ことを、雇う側である役所・企業が証明しなければならない。逆に、日本では「報復人事だった」ことを雇われる側が自ら証明しなければならない。

韓国や中国でも、内部告発者に不利な人事を行った側に罰金・懲役などの刑罰が科される。

これらと比べて、日本では不正を告発した者が閑職に追いやられたり、離職を迫られたりすることが珍しくない。それは内部告発のコストとリスクを高め、ひいては問題があってもひたすら内部で隠蔽し続けようとする悪循環を生みやすい。

つまり、内部告発にブレーキをかけようとすることは、それ以外で明るみにならない問題を闇に葬りやすくする。

今回の疑惑に関していえば、この段階で内部告発そのものを疑問視することは、国際的にみても特異な、この国の封じ込め体質を助長するものといえる。玉木代表の言い方を多少もじっていえば、「ある場合には政治的意図を持って、'情報が封じ込められて'、我々が大きく振り回されてしまう」のだ。ここでいう「我々」とは、もちろん国民のことである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イランの「黒い雨」、WHOが健康被害を警告 

ワールド

欧州委員長、原発縮小は「戦略ミス」 化石燃料依存に

ワールド

G7、石油備蓄放出のシナリオ策定をIEAに要請=仏

ワールド

イスラエル外相「終わりのない戦争望まず」、終結時期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 6
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 7
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    トランプも無視できない? イランで浮上した「危機管…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 8
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story