アフリカに広がるクーデター・ドミノ──危機に無策の「独裁者」の末路
そして、4月にはチャドで、1991年からこの国を支配してきた「独裁者」デビー大統領の死去にともない、デビーの息子マハマ・デビーが軍の支持で、議会の承認を経ないままに大統領に就任した。野党はこれを「憲法を無視した事実上のクーデター」と呼んでいる。
ギニアの事例は、アフリカで昨年から4番目のクーデターなのである。
国民のためにならない経済成長
このようにアフリカではクーデターが連鎖しているのだが、国によって事情はそれぞれ異なる。ギニアに限っていえば、少なくとも国内でクーデターに好意的な声が目立つのが大きな特徴だ。
なぜ多くのギニア国民はクーデターを支持するのか。そこには国民生活を覆う不安や危機を打開することへの期待がある。
ギニアの昨年のGDP成長率は、アフリカ開発銀行によると5.2%だった。一昨年の5.6%からわずかに下がったが、コロナ禍に直面した世界にあっては、むしろ例外的に高い水準といえる。
ただし、それはほとんどの国民には無縁の好景気だった。景気を支えたのは、輸出額の約半分を占めるボーキサイトだった。ボーキサイトはアルミニウムの原料で、その世界最大の輸出国がギニアなのだ。
ところで、現代の資源採掘は高度に機械化されていて、あまり雇用を生まない。また、汚職の蔓延するアフリカでは、政府と海外企業の癒着によって利益が流出することも珍しくない。
実際、ボーキサイト生産がいくら好調でも、ギニア国民の約55%は貧困層のままだ。好景気にともなう物価上昇は、多くの国民にとって、ただ生活苦が増える以外の意味をもたない。
これに拍車をかけたのが、感染症の拡大だ。昨年来、コロナだけでなくエボラ出血熱(致死率はコロナよりはるかに高い)が蔓延し、ギニアでは物流や人流が滞っている。その結果、世界食糧計画によると、41万人以上が食糧不足に直面しており、これは全世帯の21%に相当する。
「民主派」の末路
社会・経済的な危機はただでさえ政府への批判や不満を高めるが、ギニアではこれが怒りに変わった。危機の最中でもコンデ大統領は自分の権力を維持することに頭がいっぱいだったからだ。
今回のクーデターで失脚したコンデは、もともと民主派として台頭した。1958年の独立以来、一党制や軍事政権によって統治されたギニアで、2010年に初めて行われた民主的選挙でコンデは当選したのだ。
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