先住民族「強制収容所」で子供215人の遺骨発見──それでもカナダが先進的な理由
先住民族の代表と並ぶトルドー首相(2015年12月8日) CHRIS WATTIE-REUTERS
・カナダで先住民族の子供が集められていた「強制収容所」の跡地が発見された。
・これは先住民族を「同化」の名の下で迫害してきたカナダ史の暗部を浮き彫りにした。
・ただし、自らの暗部に意識的に取り組む点で、カナダ政府は誠意ある態度を示してきたともいえる。
カナダで先住民族迫害の歴史が明らかになりつつあるが、それでも過去と正面から向き合おうとするだけ、カナダ政府はまだましともいえる。
小さな遺骨の集団
カナダ西部ブリティッシュコロンビア州で5月28日、かつて先住民族を集めて教育していた寄宿学校の跡地から215人分の子供の遺骨が発見された(日本では「先住民」と呼ばれやすいが、英語のindigenous peopleは「先住民族」が正しい訳)。
なかには3歳くらいの遺骨まであり、現地の先住民族の代表は「想像を絶する犠牲だ」と語っている。
この発見はカナダ史の暗部を象徴する。
カナダではイギリスの植民地だった1874年、先住民族の同化を進めるため、子供をキリスト教に改宗させ、英語やフランス語(ケベック州では公用語がフランス語)で教育を行なう寄宿学校が各地に建設され、その数は最盛期には139校にのぼった。第二次世界大戦後、段階的に縮小されたものの、こうした学校は最終的に1996年まで、いわばごく最近まで運営されていた。
親元から強制的に引き離された子供たちは、粗末な建物での集団生活を余儀なくされ、食料や医薬品は十分でなく、体罰や性的虐待も常態化していた。今回、先住民族のグループが専門家の協力のもと、地中レーダーを用いた調査で、歴史の暗部を明るみに出したのであり、発見された遺骨のほとんどは1900年頃から1971年頃までのものと鑑定されている。
カナダ社会に広がる衝撃
この発見はカナダ社会に大きなショックを与えた。トルドー首相は「これは我々の国の暗い、恥ずべき歴史の一幕を思い起こさせた」と述べ、各地の政府庁舎で半旗を掲げるよう命じた。
To honour the 215 children whose lives were taken at the former Kamloops residential school and all Indigenous children who never made it home, the survivors, and their families, I have asked that the Peace Tower flag and flags on all federal buildings be flown at half-mast.
— Justin Trudeau (@JustinTrudeau) May 30, 2021
その一方で、寄宿学校の約70%を運営していたローマ・カトリック教会の責任も問われている。カナダ政府の先住民族管理局(Indegenous service)のミラー大臣は6月3日、「強制収容所」跡の発見があってもカトリック協会からいまだに公式声明や謝罪が出ていないことを「恥ずべきこと」と述べた。
これに対して、バンクーバーの大司教がSNSに謝罪を投稿したが、バチカンからは反応がないままだ。
近代国家に押し潰された人々
近代以降、国家建設のプロセスで、文化的マイノリティが同化を強制されることは各地でみられた。これは「国民」意識を作るものではあったが、結果的に先住民族などへの差別をさらに強めるものでもあった。
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