「新冷戦」時代、G20サミットに存在意義はあるか
リーマンショック後の世界金融危機に対応するために各国首脳が集まった初めてのG20(2008年、ワシントンにて。左から、当時のポールソン米財務相、ブッシュ米大統領、日本の麻生首相) Yuri Gripas-REUTERS
<6月28日から大阪で開催されたG20サミットは、米中をはじめ対立する各国も集う会議体であり、そのこと自体に存在意義があるのだが>
「新冷戦」の時代
米中の貿易戦争のエスカレートや米ロ間で結ばれていた中距離核戦力(INF)全廃条約の解消など、大国間の摩擦が拡大している状況は「新冷戦」とも呼ばれる。
相互不信が渦巻くなか、G20にはこうした対立の当事者が数多く顔をそろえる。そのため、議論がまとまりにくいのがG20の一つの特徴とさえいえる。
例えば、大阪サミットに先立って6月6日からつくば市で開催された貿易・デジタル経済相会合でも、米中対立を反映して閣僚声明に「保護主義と闘う」という文言を盛り込むことが見送られた。
何をもって自由貿易と呼ぶか
そればかりでなく、G20では何をもって自由貿易と呼ぶかすら一致した見解はない。その象徴が、世界貿易機関(WTO)の改革をめぐる議論だ。
WTOは1995年、世界全体の自由貿易に関するルール策定のセンターとして発足した。しかし、近年では先進国と新興国、開発途上国などの間の利害関係が複雑化したこともあり、その機能不全が指摘されることが多く、改革の必要性ではほとんどの国が一致している。
ところが、改革の内容をめぐって各国の要望はバラバラだ。
例えば、アメリカや日本、ヨーロッパは中国の産業補助金を念頭にWTOの規制強化を求めているが、中国はこれに難色を示している。一方、その中国はアメリカによる関税引き上げを念頭に、保護主義を取り締まるためにWTOの規制強化を主張している。このように、WTOによる規制強化という点では一致していても、向かっている方向は全く違う。
同じことは、WTOの「紛争処理」機能についてもいえる。
WTOには貿易に関する国家間の問題を法的に処理する裁判所のような役割もある。二審制の上級裁にあたる上級委員会が今年4月、韓国による福島産などの水産物禁輸を認める判断を下したことから、日本は上級委員会の権限強化を求めており、EUも基本的にこれに賛同しているが、独自路線を維持したいアメリカはこれに反対している。
足を引っ張る多様性
G20がまとまりにくい最大の要因は、メンバーの多様性にある。
もともとG20はリーマンショック後の2008年11月に開催された「金融・世界経済に関する首脳会合」にルーツがあり、それ以前に世界のけん引役だったG7(日・米・英・仏・独・伊・加)に中国、インド、サウジアラビアなどの新興国12カ国とEUを加えて発足した。
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