アルジェリア大統領失脚──体制打倒を求める抗議デモとアメリカの微妙な立場
今回の場合、ブーテフリカ氏辞任の2日後の4月6日、それまですでに抗議デモが広がっていたスーダンでは、デモ隊が陸軍本部にまで迫る事態となった。スーダンのバシール大統領は2月、1年間の非常事態宣言を発令してデモの鎮圧にあたっていたが、アルジェリアでの「独裁者」失脚は、スーダンの反政府勢力を鼓舞するとみられる。
さらに、リビアでは4月5日、反政府勢力「リビア国民軍」が首都トリポリへの進撃を開始した。
こうしてみたとき、アルジェリア政変がブーテフリカ辞任という「トカゲのしっぽ切り」で終わるか、それともさらに徹底した民主化に向かうかは、中東・北アフリカの変動がさらに加速するかを左右するといえる。
中国の方針
しかし、ほとんどの国は、ブーテフリカ氏の辞任で事態が終結することを願っているとみられる。それは、他のところで常日頃、角を突き合わせることが珍しくないアメリカと中国も同じである。
このうち、中国の立場はシンプルだ。アルジェリアはアフリカ大陸有数の産油国であるばかりか、中国が進める「一帯一路」構想の沿線上にある。IMFの統計によると、中国の対アルジェリア貿易額は67億ドル(2018)で、フランスの114億ドルに次ぐ2位だ(アメリカは65億ドルで3位)。
その中国は基本方針として、「内政不干渉」の原則を掲げて相手国の政治にかかわらず、経済関係を優先させる立場が鮮明だ。この立場からすれば、相手国の政府が民主的であるか独裁的であるかは大きな問題ではない。
そのため、中国にとっては、たとえ「トカゲのしっぽ切り」で終わり、実質的な軍事政権が存続したとしても、アルジェリアに政治秩序が保たれるなら、それで構わない。むしろ、これまでの支配層が生き残ってくれた方が、ビジネスで都合がよい(この立場は日本政府のものに近い)。
そのため、中国政府が「アルジェリア人が国情にあう道を拓く知恵と力をもつと信じている」と述べるにとどまり、首を突っ込まないことは、不思議でない。
宣教師の苦悩
これに対して、欧米諸国とりわけアメリカの立場は、もう少し苦しい。
欧米諸国は冷戦終結後、自由や民主主義の「宣教師」として、各国にその普及を説いてきた。その立場からすれば、より徹底した民主化を応援してもいいはずだが、アメリカだけでなく旧宗主国フランスもアルジェリア情勢に関しては口が重い(リビアの内戦に関しては自重を呼び掛けている)。
そこには大きく二つの理由がある。第一に、アルジェリア政府がこれまで、中国とだけでなく欧米諸国とも、石油の輸出や対テロ戦争での協力などで、比較的良好な関係を保ってきたことがある。
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