欧米諸国が「ロシアの選挙干渉」を嫌う理由──最初に始めたのはこっちだから
しかし、少なくとも民主化圧力を受ける立場からすれば、それが「内政干渉」であったことは否めません。それだけでなく、親欧米的な国の場合は深い関係にある現職を支援したり、逆に反欧米的な国の場合は野党候補を支援したりするなど、欧米諸国自身の利益が念頭にあることも稀ではありません。その典型的な例は、1991年のソ連崩壊後のロシアでした。
ロシア発足直後のエリツィン政権のもと、米ロは蜜月時代を迎えていました。この背景のもと米国はロシアの内政に深くかかわり、1996年のロシア大統領選挙でエリツィン陣営は共和党と深く結びついていたサンフランシスコのフレッド・ローウェル弁護士をはじめ、何人もの米国の選挙コンサルタントを選挙アドバイザーとして起用。不人気だったエリツィン氏の当選を支援しました。
その一方で、エリツィン政権は急速な市場経済化を促進。天然資源開発などを中心にエクソンモービルなど名だたる欧米企業の投資が相次ぎ、そのなかで新興財閥(オリガルヒ)と呼ばれるロシアの富裕層も登場しました。オリガルヒは欧米企業とともにエリツィン政権に接近し、汚職を加速させる一因となりました。
このようなエリツィン時代の混迷の反動として台頭したのが、プーチン大統領でした。「弱っていたロシアにつけこんだ欧米諸国」への不満がロシアで渦巻いていたことを考えれば、国家主義的な主張を展開し、新興財閥を壊滅させ、さらに欧米諸国と敵対的な態度を示すプーチン大統領が高い人気を維持することは、不思議ではありません。
「回転ドア」の不透明さ
こうしてみたとき、相手国の選挙や政治に何らかのかかわりをもつことは、今に始まったものではなく、ロシアに限ったものでもありません。
このような観方に対しては、「欧米諸国の場合は企業や民間団体、個人の活動で、ロシアの国家ぐるみのものとは分けて考えるべき」という異論もあり得るでしょう。確かに、欧米諸国とりわけ米国の場合、確かに企業を含む民間団体の活動は活発で、いかにも民間が政府から独立しているようにみえがちです。しかし、米国では民間と政府の垣根は低く、それは結果的に両者が一体のものとなりやすいことをも意味します。
一例をあげると、ウクライナでは2010年に大統領選挙が行われ、この際に親ロシア派のヤヌコヴィッチ氏が当選しましたが、この際に同氏の選挙アドバイザーだったのが、米国のコンサルタント、ポール・マナフォート氏でした。
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