コラム

「対アフリカ援助で中国と協力する」日本提案の損得

2018年01月15日(月)18時30分

日本政府は「自助努力」支援を援助の大方針としてきました。しかし、援助競争がアフリカの「売り手市場」としての度合いを高め、日中が「気前よく」援助し続ければ、それはかえって各国の自主的な改革意欲などをも萎えさせやすくします。それは「自助努力」の理念に逆行するものといえます。

第二に、日本自身の持続性です。先述のように日本の援助はローンが中心ですが、一方で貧困対策が援助のトレンドとなった1990年代半ば以降、貧困国向けの貸し付けの返済を免除することが「開発協力における暗黙のルール」になりました。これは国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの国際金融機関だけでなく、先進国の個別のローンにも当てはまります。

日本の場合、2008年から2015年までの間にアフリカ諸国向けに行った債務免除は合計1,568億円。その対象国にはセーシェルなど、必ずしも貧困国でなく、また大きな負債を抱えているわけでない国も含まれます。さらに外務省が公開しているこのデータは国際協力機構(JICA)と国際協力銀行(JBIC)の貸し付けのみで、その他を含めれば金額がより大きくなります。

つまり、融資に基づくインフラ整備のアクセルをひたすら踏み続けることは、日本自身の財政的な持続性の観点から懸念が大きいのです。そして、それは中国にとってもほぼ同様といえます。

冷戦期米ソの教訓

こうしてみたとき、日本がアフリカ向け援助プロジェクトに中国の参入を呼びかけることは、過剰な援助競争にブレーキをかけるもので、相互の利益に資するといえるでしょう。

昨年出版された書籍で筆者は「日中が冷戦期の米ソの教訓を踏まえる重要性」を強調しました。冷戦時代、米ソは核軍拡競争を推し進めましたが、それは緊張のエスカレートと財政負担の増加をもたらし、お互いにとって負担が大きいものでした。その結果、1969年からの戦略兵器制限交渉(SALT)、1982年からの戦略兵器削減条約(START)交渉など、軍備管理・軍縮に関する交渉が段階的に進みました。つまり、冷戦時代であっても米ソは「対抗する相手と協力することによる利益」を見出すだけの合理性を備えていたといえます。

日中関係に目を転じると、特にこの10年間で両者の相互不信は極度に高まってきました。しかし、少なくとも、好き嫌いだけでコトが済まないのは、個人同士の関係だけでなく国家関係も同じです。

相互不信に基づく「相手より優位に立つためのレース」がお互いの首を絞めあうのであれば、「レースのペースを緩める」という合意を形成することが不可能でないことは、冷戦期の米ソが実証したことです。この観点からみれば、仮に外務省が「一帯一路」と「北朝鮮」だけを理由として考えていたとしても、アフリカ援助において日中間で調整を図ることができれば、結果的にそれ以上の利益を相互にもたらすといえるでしょう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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