自民党総裁選挙を控え政治情勢は流動的に、一筋の光明も
9月末に任期を迎える自民党総裁選挙に対する注目が高まっている Kimimasa Mayama/REUTERS
<菅政権の支持率低下が続き、政局に対する不透明感は高まっているが、将来を期待できる動きが永田町でみられることは、日本株市場の一筋の光明と言える......>
22日の横浜市長選挙では、菅首相との関係が深い小此木八郎氏が、立憲民主党などが推薦する山中竹春氏に大きな得票差をつけられる結果となった。自民党からの支持がまとまらない状況で選挙戦に挑んだ小此木氏の行動には、かなり無理があったのだろう。この選挙結果を受けて「(自民党内で)「菅首相では衆院選は戦えない」との声が強まるのは不可避だ」(読売新聞8月23日)などと報じられている。
自民党の権力構造が流動化するシナリオは無視できない
新型コロナの感染が拡大する中で、9月の解散総選挙のシナリオはほぼなくなりつつあるが、菅政権へのダメージとも言える横浜市長選挙を受けて、9月末に任期を迎える自民党総裁選挙に対する注目が高まっている。遅くとも11月までに行われる衆議院選挙を見据えて、「菅下ろし」の動きが強まるなど、自民党の権力構造が流動化するシナリオは無視できないだろう。
報道などから自民党総裁選の状況を以下でまとめる。まず、2020年に自民党総裁選挙を経て菅首相が誕生した経緯を踏まえると、菅首相を支える安倍派と麻生派、ニ階派に属する重鎮政治家などが、菅首相の代わりとなる「選挙の顔」を求めるかどうか。今回の総裁選挙は、昨年のように国会議員による票取りだけではなく、自民党の党員による投票が加わるとみられる。
情勢はなお流動的である中、菅首相は総裁選挙への出馬を明言しているが、重鎮政治家は菅首相を支持する姿勢を示している。菅首相に加えて、8月23日時点で総裁選挙に出馬する意向を示しているのは、下村博文政調会長、高市早苗元総務相である。そして、岸田文雄前政調会長は今週にも出馬する意向を示したと、8月23日の産経新聞が観測記事を報じている。
岸田氏は、増税を伴う緊縮的な財政政策に転じる?
岸田氏は前回の総裁選挙にも出馬しており、岸田派の首領なので本人の判断次第である。岸田氏が、菅首相に対して、どのような立場で政策論争を挑むのか。岸田氏は、6月11日に再分配を重視した経済政策を検討する議員連盟を設立、これに、安倍晋三前首相と麻生太郎財務相が最高顧問に就任している。
こうした行動は、岸田氏の経済政策姿勢が安倍政権に近づいたかのようにも見える。アベノミクスの生みの親として著名な山本幸三衆議院議員が岸田氏を支えていることが、岸田氏の経済政策の考えに影響した可能性がある。この会合でも「アベノミクスによって私たちの経済は大きく変化した」と岸田氏は一定の評価をしている。一方で、「これからは成長の果実を多くの人々に享受してもらうかが大変重要になってくる」と述べている。岸田氏は再分配政策を重視しているからなのだろうが、経済成長はもう十分であると岸田氏が考えていることを示唆する。
この一言だけで岸田氏の政策を判断するのは慎重であるべきだし、同氏の考えが柔軟になっているかもしれない。ただ、経済成長を重視していた安部前首相の路線を引き継ぐとした菅政権とは、岸田氏は異なる経済政策運営を行う可能性が高いだろう。
具体的に、2023年に任期を迎える日銀執行部人事には、今後の官邸の経済政策の姿勢が大きく影響する。岸田氏による政策転換によって、2%インフレ目標に対するコミットを弱め、そして、1990年代半ば以降デフレ克服に十分な対応を繰り出さなかった官僚組織の意向に沿った金融政策に変わると予想される。
財政政策に関しては、現状、新型コロナという非常事態において、財政健全化を最優先とする政治家などからの声は目立っていない。ただ、大きく拡大した財政赤字を前に、早期増税を狙う政治勢力は根強いと見られる。新型コロナ問題が落ち着いた時点で早々に、岸田氏は、所得再分配に政策の主軸が移ることを契機として、増税を伴う緊縮的な財政政策に転じると筆者は見ている。
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