自民党総裁選挙を控え政治情勢は流動的に、一筋の光明も
インフレ2%目標が最優先とする高市氏
一方、下村、高市両氏に関しては、総裁選挙出馬に必要な推薦人を集められるのか、現状では不明である。また、彼らが出馬するとしても、次次回以降の選挙を睨んで首相候補として知名度を高める意味合いが大きいだろう。
こうした中で、総裁選出馬の立場を表明する高市氏は、マクロ経済政策に対する考えを明確に打ち出しているので、最近の文藝春秋のインタビュー記事などからピックアップする。高市氏は、菅総理を応援しているとする一方で「小出しで複雑な支援策に終始している」とコロナ対応のための菅政権の財政政策をやや批判的に評している。そして、「インフレ率2%に達成するまでは、時限的にプライマリーバランス規律を凍結して、戦略的な投資に関わる財政出動を優先する」と述べている。
インフレ2%目標が最優先とされ、経済成長を押し上げる拡張的な財政政策が実現したのは、第2次安倍政権発足直後の2013年の短期間である。この時期のみが、金融財政政策が一体となったマクロ安定化政策の徹底された期間だと筆者は認識しているが、この時の政策を続けることが、2%インフレと完全雇用実現という経済正常化に必要と高市氏は判断している。
債務残高の制約によらずに長期間財政赤字を継続させている米国の財政政策運営など、幅広い知見を複数のブレーンなどから得たことで、この財政政策に対する考え方を理解されたのだろう。自民党の有力政治家からこうした財政政策に対する考えが打ち出されたことは、大きな変化である。今後の自民党政治家の中で経済政策の議論の質が高まり、マクロ安定化政策が更に改善することを期待させる動きと評価できるし、今後の菅政権の経済政策運営に影響する可能性がある。
日本株市場の一筋の光明
以上情勢をまとめたが、これまで菅政権を支えてきた重鎮政治家の意向は変わらないとみられるので、菅首相が消去法的に自民党総裁として選ばれる、というのが筆者が想定しているメインシナリオである。もちろん、政治情勢は流動的である。
ただ、新型コロナの混沌を経て、高市氏のような世界標準の経済政策を示す自民党の政治家が現れた。また、8月22日に日本維新の会の馬場幹事長は、総選挙の結果によっては、自民・公明両党と、政策ごとの部分的な連携がありうる、との考えを示した。日本維新の会は、経済成長を重視する政策を掲げている。菅政権の支持率低下が続き、政局に対する不透明感は高まっているが、将来を期待できる動きが永田町でみられることは、日本株市場の一筋の光明と言えるだろう。
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