三谷幸喜の初映画『ラヂオの時間』は完璧な群像劇だった 隠された毒が深みを生む
2021年04月16日(金)11時45分
その後に三谷の作品は、全部とは言わないがかなり観ている。脚本として参加した『12人の優しい日本人』や『笑の大学』は別にして、監督作は毒がどんどん薄くなってきた。だから味に深みがない。甘いと辛いと苦いとしょっぱいだけ。他人事ながら悔しい。もっと微妙な機微を描ける作家だったはずなのに。
この原稿を書くために、三谷の最新監督作である『記憶にございません!』を途中まで観てやめた。原稿がさらに辛辣になってしまうと予感したからだ。僕もまだ現役の作り手だ。人の批判はあまりしたくない。
この原稿を書き終えてから、(予感が外れることを祈りつつ)改めて観るつもりだ。
『ラヂオの時間』(1997年)
監督/三谷幸喜
出演/唐沢寿明、鈴木京香、西村雅彦、戸田恵子
<本誌2021年4月20日号掲載>
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