EVから自動運転へ飛躍する中国の自動車産業
ファーウェイの自動運転用頭脳を搭載した北京汽車グループの「極狐(Arcfox)アルファT」(4月19日、上海自動車ショー) Aly Song- REUTERS
<中国のEV販売台数はすでに日本の全自動車販売の6割程度に達するだけでなく、ファーウェイのような通信機器メーカーの参入で「知能ネット化」や標準化もどんどん進んでいる」>
中国の電気自動車(EV)産業が昨年後半以来すごい勢いで伸びている。
中国のEV販売台数は2014年の7万5000台から2018年の125万6000台まで快調に伸びたが、2019年後半に購入に対する補助金が打ち切られたことから、2019年は前年に比べて4%減少した。
なお、ここでいうEVとは、中国でいう「新エネルギー自動車」のことを指す。新エネルギー自動車には純電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)が含まれる。最近では中国での新エネルギー車の販売台数のうち83%がBEV、17%がPHEV、FCVはわずかとなっている。
2020年前半は、コロナ禍もあって生産と販売がさらに落ち込んだが、購入補助金が復活したことで後半には急回復し、年間では136万7000台のEVが生産された。
2021年に入ると、いっそう生産と販売が伸び、1~9月は生産台数が216万台で前年同期に比べて2.85倍というすさまじい増え方である。この勢いで行くと、2021年1年間で300万台を突破しそうだ。
新車販売の5台に1台がEVに
2020年10月に制定された「新エネルギー自動車産業発展計画2021~2035年」では「2025年には、新車販売台数の20%前後をEVとする」ことが目標とされていた。2020年の新車販売に占めるEVの割合は5.4%だったので、遠い目標のように思えたが、2021年1~9月は11.6%、9月だけをとれば17.1%、と目標へぐんぐん近づいている。
年間300万台というと、日本の自動車販売台数が1年間で520万台(2019年)だから、中国のEV販売台数はざっと日本の全自動車販売台数の6割弱ぐらいの規模に達しているということになる。
自動車の生産には規模の経済性があり、一般には1工場で年間10万台以上組み立てる規模があれば効率的である。EVは一般の自動車よりもシンプルな構造なので、経済的な最小生産規模はもっと小さいであろう。だが、日本の場合、2019年にはBEV、PHEV、FCVを合計しても日本全体で販売台数が3万8585台しかなかった。これでは効率的な生産は難しく、製品価格が高くなってしまう。
一方、中国では2021年1~9月にトップだったBYDと2位の上汽GM五菱は生産台数が28万台、3位のテスラ中国は21万台と、一般の自動車メーカーに匹敵するような大量生産を行うEVメーカーが輩出している。こうなると、生産量が少ないことによる高コストというハンディはすっかり克服され、一般の自動車と対等に競争できるようになる。
2021年現在、1台あたり1.3~1.8万元(23~32万円)出ている補助金は22年には削減され、23年には撤廃される見通しである。その時もなお勢いを保てるかどうかはやや不安であるものの、さすがにここまで成長すると、もう補助金なしでも自立していけるのではないだろうか。
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