新疆の綿花畑では本当に「強制労働」が行われているのか?
さて、生産建設兵団のことを詳しく紹介したのは、実は兵団こそが新疆における綿花栽培の主たる担い手であるからだ。兵団は綿花、トマト、小麦などの栽培を大規模に展開している。2019年時点で、兵団は新疆の綿花生産の40%を占め、兵団以外では、北疆で綿花生産の21%、南疆で綿花生産の39%を担っている。写真2は、兵団の中心都市である石河子に行った折に車上から見た綿花畑である。
(筆者撮影)
兵団の住民の86%は漢族であり(Bao, 2018)、特に北疆の兵団ではウイグル族が働くことはほとんどない。綿花農業において最も労働力を必要とするのは綿摘みの作業であるが、8月末から11月にかけての綿摘みの季節にはかつて大勢の出稼ぎ労働者たちが新疆にやってきていた。出稼ぎ労働者のほとんどは甘粛省、陝西省、河南省、四川省、山東省など内地の各省からの人々である。
きついが高収入
最も多かった1998年には、生産建設兵団だけで70万人以上の出稼ぎ労働者が内地から来た(蘭・李、2019)。綿摘み労働者に対する報酬は食事や宿舎、および往復の交通費は綿花農場側が負担したうえで、1キロ摘むごとに1.7~2元の出来高払いであった(2011年時点)。熟練すれば1日に100キロぐらいの綿を摘むことができるので、1日で200~300元、1か月では6000~8000元の純収入となる(胡、2011)。この年の国有企業従業員の平均賃金は月3600元だったから、綿摘みはなかなかの高収入だったことがわかる。もっともその分きつい仕事ではあるようだ。
だが、綿摘みの出稼ぎ労働者は近年めっきり減っており、2016年に兵団に来た出稼ぎは14万人で、その後さらに減った(蘭・李、2019)。なぜなら綿摘み作業が機械化されたからだ。2018年には兵団での機械摘みの割合が80.4%に高まり、2020年の北疆での機械摘みの割合は97%にもなったという(新華視点、2021)。
一方、南疆では機械摘みの割合が2020年の時点でもまだ60%で、手摘みに依存する部分がまだある。2000年以降、南疆にある兵団では、周辺に住むウイグル族住民が綿摘み作業に従事することが多くなったという(于、2019)。
ところで、中国政府は2016年に始まった第13次5カ年計画において農村の貧困人口を2020年までにゼロにするという目標を立てた。ここでいう貧困人口とは収入が貧困ライン以下の人々を指し、具体的には家庭の1人あたり収入が2010年価格で年間2300元というのがその基準である。これは、とりあえず衣食住および基礎的な医療と義務教育の経費をなんとかまかなえる水準として定められた。
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