コラム

爆発する中国のAIパワー

2019年12月23日(月)17時15分

中国がデータ量の豊富さを武器にAIで急成長をみせる一方、日本ではデータが足りなかったり、あっても使えなかったりすることがAIの発展を妨げる可能性が高い。たしかに、我々の生活の中にも、例えば空港で出入国時にパスポートと顔を照合する作業を機械が行うようになったり、コンサート・チケットの本人確認のために顔認証が行われたりと、AIがいろいろな分野に応用され始めている。だが、日本ではデータの作成にやたらに協力させられるが、データの恩恵はさっぱり感じられないということがある。

何の話をしているのかという、マイナンバーのことである。マイナンバーは2016年に導入され、それ以来、私はいろいろな会社や機関からマイナンバーの届け出を求められ、マイナンバー通知書と身分証のコピーをこれまで何十通も発送してきた。

マイナンバーの本質は納税者番号であって、これがあれば税務署で国民一人一人の所得と納税にかかわる情報を集める作業がだいぶ軽減される、ということは理解できる。だが、マイナンバーをせっせと届け出る国民にとってはこれまでのところまったくメリットがない。

中国のデータを利用する手も

総務省はマイナンバーカードを持てば、写真付き身分証として使え、住民票も簡単にとれるようになって便利だよというが、導入から3年経っても国民への普及率が14%に届かない低迷ぶりである。しびれを切らした政府は2019年度中にすべての公務員がマイナンバーカードを取得することを義務づけるようだが、国民が不要だと思っているものを押し付けても、活用されることはないだろう。

日本国内でデータがなかなか生成されないのであれば、いっそ中国のデータを日本のAIのエサとして活用することを考えたらいいのではないか。中国人の消費行動に関するデータは中国市場でビジネスを行う企業にしか役に立たないかもしれないが、例えば医療診断のデータなんかは日本でも役に立つ可能性がある。

データはもろもろの生産要素のなかでも国際間の移転のコストが最も低い。であるならば、中国のデータを日本の企業が購入してAIに与えることも低コストで可能なはずである。データを国際間で取引することに対しては中国政府は消極的だし、日本国内でも中国のネット企業の日本進出に対して「データが漏洩する」といった反発がある。しかし、むしろデータの国際間取引のルールを定めて積極的に取引したほうが、各国のAI企業がより公平な基盤に立って競争できる。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

欧州証券市場監督機構、資産運用大手を監督すべき=E

ワールド

タイ・アヌティン首相、タクシン派と連立政権発足へ

ビジネス

中国の1月新規融資、前月比急増も予想下回る 需要低

ビジネス

EU貿易黒字が縮小、米関税と中国の攻勢が響く
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 7
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 8
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story