コラム

自転車シェアリング、バブル破裂後の着地点

2019年07月26日(金)11時00分

その先鞭をつけたのが広州市である。広州市もご多分に漏れず80万台のシェア自転車が街にばらまかれていたが、2019年4月に、広州市中心部の6区(総面積1559㎢で、西多摩郡と八王子市を除く東京都ぐらいの面積がある)に配置するシェア自転車の総台数を40万台とし、それを運営する事業者3社を入札によって選ぶことを発表した。6月末にはモバイク、アリペイ系のハローバイク(哈囉出行)、滴滴出行が運営するディーディーバイク(青橘単車)の3社が選ばれた。

また、最近では利用料金も引き上げられ、北京ではハローバイクは15分で1元、モバイクは最初の15分は1元で、その後15分を経過するごとに0.5元となった。

これまではofoのようにとにかく数多くばらまき、料金を安くしてユーザーを増やすことが競争に勝つ道だと信じられてきた。しかし、業者自身で管理できないほど自転車が多くなりすぎ、街中に故障して使えない自転車があふれ、ユーザー離れを招く一因となった。業者が無理なく事業を続けられる料金水準のもとで、各業者が自転車のメンテナンスや配置の工夫を通じて自転車の利用率を競う方向に誘導できれば理想的である。広州市の規制は量的競争から質的競争への転換を促す試みであり、もしこれが成功すれば、自転車シェアリングを民間の力で運営するモデルになるだろう。

東京では配達に使われている

話変わって、東京の都心10区がドコモ・バイクシェアに委託して運営している自転車シェアリングは相変わらず役に立たないが、最近利用者が少し増えてきたようだ。誰が利用しているのかというと、Uber Eatsでお料理の配達をしている人たちである。ドコモ・バイクシェアの自転車は電動アシスト車なので、配達の体力負担を低減するし、配達需要の多い都心部に配置されているので好都合だというのは理解できる。しかし、区の予算で運営されているものが、民間事業者の輸送手段として利用されることが適切だとは思えない。区議会などで問題にならないのだろうか。

モバイクを買収した美団点評も「美団外売」という配達サービスが事業の柱の一つである。だが、美団外売の配達員たちは専用の電動バイクを持っていて、モバイクの自転車を利用したりはしていない。

民間会社の事業である中国の自転車シェアリングは都市の公共交通を補完する役割を果たしており、それゆえに地方政府もこれをつぶさずになんとか軟着陸させようとしている。一方、東京の10区が費用を負担している自転車シェアリングは公共的な役割を大して果たせぬまま、民間の営利事業に役立てられている。

20190730issue_cover200.jpg
※7月30日号(7月23日発売)は、「ファクトチェック文在寅」特集。日本が大嫌い? 学生運動上がりの頭でっかち? 日本に強硬な韓国世論が頼り? 日本と対峙して韓国経済を窮地に追い込むリベラル派大統領の知られざる経歴と思考回路に迫ります。


プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国こそが「真の脅威」、台湾が中国外相のミュンヘン

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    反ワクチン政策が人命を奪い始めた
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 8
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story