コラム

5G「生活革命」が始まった!

2019年05月07日(火)07時00分

面白いのは、ナビに自分の車の速度も表示されることである。スピードを出しすぎると「この道路は制限速度60キロなので減速してください」とアナウンスが入る。また、高速道路では「300メートル先に速度計測器がありますので気を付けましょう」と教えてくれる。

はっきり言って、私が日本で運転しているトヨタ車に備え付けのカーナビにはここまでの位置情報の正確性と情報のきめ細かさはない。スマホのナビアプリが正確なうえに、地図情報や道路情報も逐次更新されているとなれば、自動車に備え付けのカーナビなどいらない、スマホを乗せる台さえあればいい、ということになりかねない。

もともとカーナビは日本以外にはなかなか普及しにくい商品だった。アメリカではカーナビが車上荒らしに狙われるので、車にカーナビが装備されていることは稀である。レンタカーでカーナビを頼むとポータブル式のものを貸してくれて、車を離れるときには持ち歩くように言われる。

車に装着された日本式のカーナビは、治安がさほど良くない国では車上荒らしに狙われるとして敬遠され、中国などの途上国では高価すぎるとして敬遠され、なかなかグローバルな商品にはならなかった。

スマホとの連結次第

だが、ファーウェイの「1+8+N戦略」は、日本式のカーナビもスマホとの連携を強めることでもっと活躍の場が広がりうることを示している。スマホは最新の情報を簡単に取り入れることできるが、車に装備されたカーナビは車からの情報を集められるうえにスマホよりも画面が大きいという特徴がある。両者が連携すれば、位置情報が正確で、最新の道路情報や周辺施設情報が把握でき、かつ画面が大きくて見やすい最強のカーナビになるだろう。

それに加えて、車の他の機能もスマホとの連携で活用の幅が広がる。例えば、私の車にはバックする時のためのモニターカメラがついているのだが、このカメラはバックする時以外には用なしである。たまにあおり運転をされたりしたときには、「後方の車の画像をとって警察にチクってやろうか」と思ったりもするが、現状では後方モニターカメラはその役には立たない。かといってわざわざドライブレコーダーを買って備えつけたいというほど頻繁にあおり運転をされるわけでもない。もしモニターカメラとスマホとを連結することができれば、モニターカメラの画像をスマホのなかのメモリーやクラウド上にとっておくこともできるようになるだろう。

このように、インターネット、スマホ、ステレオや車(カーナビ)などの機器を5Gの高速度・大容量の通信で結ぶことによって、さまざまな機器をある時はスマホの情報を表示する画面として、ある時はスマホに情報を伝えるセンサーとして利用する。こうすることによって、ステレオ機器はCDの形で保存しようとすれば家に収まりきらないぐらいの量の音楽が聴き放題の機械に進化し、カーナビは情報の新しさと正確性とを兼ね備えた機械に進化する。

5G時代というのは、車に乗って行先を告げれば自動運転でそこまで行ってくれる、というような夢物語の世界ではない。むしろ、いま私たちの身の回りにある電気機器がぐっと機能を高める、というのが目前に迫った5G時代の姿であろう。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=上昇、相互関税発表にらみ値動きの荒い

ビジネス

NY外為市場=ドル/円上昇、対ユーロでは下落 米相

ワールド

トランプ米大統領、「相互関税」を発表 日本の税率2

ワールド

イラン外務次官、核開発計画巡る交渉でロシアと協議 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story