コラム

5G「生活革命」が始まった!

2019年05月07日(火)07時00分

モバイル関連見本市「モバイル・ワールド・コングレス」に展示されたサムスンの5Gスマホ(2019年2月25日) Sergio Perez−REUTERS

<自動運転や遠隔医療や没入感満点のVRスポーツ中継──5Gというととかく夢の技術として語られがちだが、この4月から始まったサービスでは、今使っている技術の延長線上に生活を一変させる革命が起こる>

4月3日、韓国の通信会社、KTとSKテレコム、そしてアメリカの通信会社、ベライゾン・コミュニケーションズが相前後して次世代通信規格「5G」の商用サービスを開始した(『日経ビジネス』2019年4月15日)。

「5G」というと自動車の自動運転ができるとか、万物がインターネットでつながるIoT(物のインターネット)が実現するとか、夢のような未来の話かと思いきや、意外に早く5G時代が始まったのである。

4月16~17日に開催されたファーウェイ(華為技術有限公司)のグローバル・アナリスト・サミットで発表された調査によれば、アンケートに回答した世界各国の通信業者のうち42%が2019年のうちに5Gのサービスを始める予定だと回答し、27%は2020年に始める予定だという(Huawei, Mobile World Live, 5G Report: Accelerated momentum in 5G network rollouts as the search for business models continues, 2019)。

4Gが始まった2009年に比べて、5G元年である2019年には専用チップや基地局、スマホなど5Gに対応した機器がすでに数多く出ているので、これから5Gへの移行が急ピッチで進み、2022年には全世界のユーザー数が5億人に達するとファーウェイでは予測している。日本のドコモ、au、ソフトバンクも2019年のうちに試験サービスを開始し、2020年に本格始動する予定である。

marukawasatuei190502.jpg
ファーウェイのグローバル・アナリスト・サミットで登壇した胡厚崑(Ken Hu)副会長。筆者撮影

テレビカメラがワイヤレスに

自動運転はまだ実験段階だというのに、通信事業者たちはなぜ5Gへの移行を急いでいるのであろうか。その理由はいたって現実的で、通信の運営コストが削減できるからである。調査によれば通信事業者の52%が5Gを始める最も重要な動機としてコストの削減を挙げていた。つまり、同じビット数の情報をやりとりするのに、5Gの方が従来の通信方式より低コストでできるのである。

つまり、5G時代が始まったからといっていきなり自動運転が始まるわけではなく、いま我々がスマホで使っているサービスがもっと快適にサクサク動くようになる、という程度が当面の展開であろう。

だが、そうした量的な向上のすぐ先には質的な転換が待っている。

例えば、通信速度が速い5Gを使えば4Kや8Kの画像を無線で送ることができるので、テレビカメラをワイヤレスにすることができる。スマホぐらいの小さなカメラを使っても大画面での視聴にも十分耐えるような質の画像を現場から中継することが可能になる。そうなると、テレビ局のカメラマンの仕事もだいぶ楽になるだろう。だが、より突き詰めて考えると、スマホに装備されたカメラでテレビ中継できるということになれば、高価な放送機材を持たないような人々もテレビ報道をすることが可能となり、放送というもののあり方が根本から揺さぶられる可能性もある。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米の州司法長官、AI州法の阻止に反対 連邦議会へ書

ビジネス

7-9月期GDPギャップ3期ぶりマイナス、需要不足

ワールド

韓国前首相に懲役15年求刑、非常戒厳ほう助で

ビジネス

景気判断「緩やかに回復」維持、物価高継続の影響など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story