日本の電子マネーが束になってもかなわない、中国スマホ・マネーの規模と利便性
すると、人々がスマホ・マネーを持っていることを前提としたサービスが一気に開花した。 例えば、以前に本コラムで紹介した白タク配車サービスや、前回取り上げた自転車シェアリング、無人コンビニや現金を入れる穴のない自動販売機など、スマホ・マネーを持っていないと使えないサービスが増えている。これがまたスマホ・マネーへ人々を引きつけるプル要因となる。
2016年の中国におけるスマホ・マネーの利用額はなんと1000兆円に及んだ(艾瑞諮詢調べ)。一方、日本での電子マネーの利用額は2015年におサイフケータイを含めて4.5兆円弱だった(日本銀行決済機構局『モバイル決済の現状と課題』2017年6月)。しかも、日本の電子マネーは多数のブランドがひしめき合う群雄割拠の状況にある。もしここへ1000兆円の市場をほぼ二分する支付宝、微信支付が本格的に進出してきたら、まるで元寇が戦国時代の日本を襲うようなもので、群雄たちは枕を並べて討ち死にしてしまうかもしれない。
日本はブランドが乱立
「群雄割拠」という表現がピンと来ない人は、どこでもいいから近所のコンビニにいって、レジの周りを見てほしい。ざっと20以上の電子マネーやクレジット・カードのロゴが並んでいるはずだ。こんなにいっぱいあると、自分が持っている電子マネーが使えるのかどうか調べるのも一苦労である。
よく見ると、コンビニによって使える電子マネーが微妙に違っていることに気づく。下の表では日本の主なコンビニチェーンで使用できる電子マネーを整理した。○は使える、×は使えない、◎はポイントがつくとか、レジ打ち係が勧めてくるなど、各チェーンが優遇しているものを示している。
これを見てわかることは、交通系ICカード(Suica,Pasmo, Kitakaなど)やEdyなどの中間勢力はどこのコンビニでも使えるが、各チェーンで強く推している電子マネー(例えばローソンのPonta)は他のチェーンでは使えないということである。
こういうつまらない足の引っ張り合いをやっているから日本の電子マネー全体の利便性が高まらず、消費者が現金から電子マネーへなかなか移行しないのだと思う。結局、どの電子マネーも使える範囲が限定的で、現金に及ばない。だとすればやっぱり現金を持ち歩いた方が便利だ、ということになる。
ただ、日本にも現金を部分的に上回る利便性を持った電子マネーが一つだけある。それは交通系ICカードだ。電車・バスでの利便性は現金を上回るし、上の表でわかるようにどのコンビニチェーンでも使える。支付宝や微信支付はQRコードを使う仕組みであるため、仮に日本に本格進出しても、電車・バスにおける交通系ICカードの役割を奪うことはできないだろう。
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