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東金市女児殺害事件から15年──「不審者探し」の副作用と、日本の防犯対策に欠けた視点とは?
このように、東金と加古川の遺体発見現場は、どちらも、物理的に「見えにくい場所」であるが、それだけでなく、そこは心理的にも「見えにくい場所」だった。なぜなら、東金の現場周辺には、おびただしい落書きがあり、加古川の現場周辺にも、おびただしい不法投棄ゴミがあったからだ。
最も象徴的なのは、東金の現場の斜め向かいにある公園の側溝にも、加古川の現場横の空き地にも、放置自転車があったことである。放置自転車は、割れ窓理論が重視する「無関心のシグナル」の一つ。それが多いと、心理的に「見えにくい場所」になるというのだ。
割れ窓理論とは、「管理が行き届いてなく、秩序感が薄い場所では犯罪が起きやすい」という理論で、犯罪機会論のソフト面(心理面)を担っている。
割れ窓理論は、地域に目を向け、その秩序の乱れを重視する。それは「悪のスパイラル」と呼ばれる心理メカニズムを想定しているからだ。秩序の乱れという「小さな悪」が放置されていると、一方では人々が罪悪感を抱きにくくなり(悪に走りやすくなり)、他方では不安の増大から街頭での人々の活動が衰える(悪を抑えにくくなる)。そのため、「小さな悪」がはびこるようになる。すると、犯罪が成功しそうな雰囲気が醸し出され、凶悪犯罪という「大きな悪」が生まれてしまうというわけだ。
地域安全マップで景色解読力を高める
このように、事件現場を検証すると、同じような犯行パターンが繰り返されていることが分かる。したがって、この犯行パターンを読めれば、そこから類推して、犯罪者が次に選ぶ場所、つまり、犯罪発生の確率が高い場所を見抜くことができるはずだ。そして、それを導くのが、「入りやすい」「見えにくい」というキーワードである。
犯罪が起きやすい場所は、このキーワードを意識すれば、だれでも発見できる。しかし、「危ない人」に取りつかれていると、なかなか発見できない。そこで必要になるのが、「危ない場所」を探す「地域安全マップづくり」である。地域安全マップを作れば、だれもが、いつの間にか、人から場所へ視点が転換し、犯人目線に立って、犯罪者が好む場所が分かるようになる。
地域安全マップとは、犯罪が起こりやすい場所を風景写真を使って解説した地図である。具体的に言えば、(だれもが/犯人も)「入りやすい場所」と(だれからも/犯行が)「見えにくい場所」を洗い出したものが地域安全マップだ。だれでも楽しみながら「犯罪機会論」を学ぶことができ、その過程で「景色解読力(危険予測能力)」が自然に高まる手法として、02年に筆者が考案した。
この地域安全マップづくりを疑似体験する動画がある。アニメーションを見ながら、仮想の街を歩き回り、景色を見て考える。フィールドワークの過程で、景色解読力が自然に高まる内容だ。家族でチャレンジしてみてはいかがですか。
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