コラム

「世界陸上断念の女子陸上セメンヤ選手はただの女性、レイプのような検査をやめて出場させてほしい」

2019年08月29日(木)18時30分

DSDの判明時期は3つ

――生まれてから、どのような過程を経てDSDであることが分かるのでしょう?

DSDの判明時期は大きく3つに分かれます。

1つ目が出生時、生まれた時です。この時は外性器の形やサイズがちょっと違うということが、産婦人科医療でわかることがあります。その場合は、すぐに専門医療施設の方に紹介をしてもらうように、今の所お願いをしているのですが、なかなかそれが徹底されていないのが現状です。DSD専門医療施設では、然るべき検査の上での性別判定が今は可能になっています。

(2つ目に)思春期前後に判明するDSDの方が、出生時よりも多くなっています。基本的には、女性のDSDで、こちらは婦人科から始まります。正直なところ、誤診も多いです。こちらの方もDSDの専門医療施設の方に、ぜひリファー(紹介)してもらいたいと思っています。

3番目は不妊治療で判明します。主にこちらは男性の場合になりますが。性別の決定に関わる情報を持つ染色体にはX型とY型の2種類がありますね。「XY」の組み合わせで男性、「XX」で女性とされてきましたが、例えばある男性の場合には染色体が XXYであったと。男性で染色体がXXだったことが分かる場合もあります。

Xが2つの場合、一般的には、それだったら女性と思ってしまいますが、SRY遺伝子などがくっついて生まれてくる場合、現実には男の子に生まれ育つということもあるんです。

不妊治療の専門をされている方は、男性不妊で、染色体でXXYが出てきたりとか、XXが出てきたりということは、結構よくあることなので、こちらの方では変な説明の仕方とかは、一般的にはされていません。

ただ、問題は、不妊治療でもいい加減なところはあります。そういうところでは、「あなたは実は女性でした」というような、間違った説明の仕方がされていることが実際にあります。

――一般的なレベルでは、そういう専門機関があることさえ、医師側が知らない、ということがあるのでしょうか。100%の医師が知っているわけではない、ということが?

その通りです。

――DSDは「治す」ものではない、と解釈して良いでしょうか。

染色体レベルでは、治す・治さないのレベルの話ではありません。ただ、出生児に判明するDSDの場合には、命に関わるDSDが多いのです。こちらの方は、ちゃんと対処・対応をしていただく必要があります。

――日本で、専門医療施設はどれぐらいありますか。

チーム医療ができて、児童精神科医がいて、両親のショックやこれからの子育てに関して、ちゃんとフォローができる施設は、日本では数カ所になるでしょう。

身体の性についての固定観念

――改めて、DSDの定義について、伺いたいのですが。ネクスDSDジャパンさんは、「体の性の様々な発達」という用語を使っていますね。

DSDは、さまざま体の状態を含む、非常に大きい概念です。男の子で尿道口の位置が違う尿道下裂、あるいは膣や子宮がなかったことがわかる女性なども含みます。

「女性だったら絶対に膣や子宮があるはずだ」、とか、「男性だったら尿道口がこの位置にあるはずだ」という固定観念とは異なる体の状態を持っている人たち。これがDSDの定義です。自分たちは男性、あるいは女性という考えは一般の方と変わりません。

トランスジェンダーの人や、あるいは自分を男でも女でもないと思う人たち、海外では「ノン・バイナリー」という風に言われていますが、日本では「Xジェンダー」といいます。そういう風な概念とは、全く違います。

――医療機関で、もし外見でもなく、染色体でもなければ、どのようにして性の決定を行っているのでしょうか。

遺伝子診断によって様々なことが分かるようになってきています。

例えば、男性か女性かの基準を考えるときに、外性器とか染色体だとか、あるいは精巣か卵巣かのどっちかなんだという風に、ある一つの基準にこだわりがちですよね。ただ、そういう風にただ一つの基準だけで判断すると、性別判断が間違ってしまうことがあります。

総合的に判断することが必要なんです。遺伝子までを含めて、染色体はこうだけれど、外性器の形状はこうで、性腺はこうで、子宮はこうで、遺伝子はこうで、と、その子自身を全体的に見て性別判定がされています。

総合的に見ると実は性別判定は可能ですけれども、染色体とか、性腺の種類にみんなこだわってしまう。強迫的になってしまうのです。むしろ、そういうことをしないということが、重要と考えています。実は、セメンヤさんの話でも、結局同じ間違いが繰り返されています。

プロフィール

小林恭子

在英ジャーナリスト。英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。『英国公文書の世界史──一次資料の宝石箱』、『フィナンシャル・タイムズの実力』、『英国メディア史』。共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数
Twitter: @ginkokobayashi、Facebook https://www.facebook.com/ginko.kobayashi.5

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米GMの四半期コア利益が予想超え、SUV販売好調 

ワールド

G7、一方的措置でなく共通の解決策を模索する必要=

ビジネス

米当局と緊密に連携し「適切に対応」、今夕の円急騰に

ワールド

ウクライナ第2の都市ハルキウに攻撃、広範囲に停電 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 3
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 6
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 10
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story