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ウクライナを広島になぞらえたゼレンスキー...戦争と核の悪夢を未来に残さないための重い問いかけ
原爆死没者慰霊碑に献花したゼレンスキー大統領と岸田首相(5月21日) Ministry of Foreign Affairs of Japan/Handout via REUTERS
<ウクライナのゼレンスキー大統領はG7広島サミットに出席し、「ロシアの攻撃で焼け野原になった街は原爆投下後のヒロシマと似ている」と語った>
[ウクライナ中部クリヴィー・リフ発]広島での主要7カ国首脳会議(G7サミット)に出席したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日、「私は戦争で歴史の石に影だけを残して消し去られる運命にあった国からここに来ました。しかし英雄的な国民は戦争そのものを影にするよう歴史を転換しています」と演説した。
ゼレンスキー氏は広島平和記念資料館(原爆資料館)で見た「人影の石」のメタファー(隠喩)を演説に取り入れた。爆心地から260メートルの銀行支店の開店前に入口階段に腰掛けていた人はその場で死亡したと考えられている。原爆の強烈な熱線により階段は白く変色し、腰掛けていた部分は影のように黒くなった。
「敵が通常兵器を使用しているとはいえ、ロシアの爆弾や大砲で焼け野原になった私たちの街はここ(原爆資料館)で見たものと似ています。ヒロシマは見事に再建され、現在に至っています。ロシアの攻撃で廃墟となったすべての都市を、一軒の家も残っていないすべての村を再建することを私たちは夢見ています」
ゼレンスキー氏は「ロシアはわが国最大かつ欧州最大のザポリージャ原発を1年以上にわたって占拠しています。ロシアは世界で唯一、戦車で原発に発砲したテロ国家です。原発を武器や砲弾の貯蔵所として利用した国は他にはありません。ロシアは原発の陰に隠れて、私たちの都市にロケット砲を撃ち込んでいるのです」と非難した。
「ロシア軍は放射能汚染物質が埋まる森に塹壕を掘っていた」
ウクライナは1986年のチョルノービリ原発事故を生き抜かなければならなかった。今も国土の一部は立ち入り禁止になっている。「この地帯でロシア軍は攻勢をかけてきました。旧ソ連時代に放射能汚染物質が埋められた森の中に塹壕を掘っていたのです。ロシアの悪と愚かさをそのままにしておくと、世界がボロボロにされるのは必至です」
ゼレンスキー氏は「戦争が歴史の石に影を残すだけとなり、それが資料館の中でしか見ることができないよう世界中のみんなができる限りのことをしなければなりません」と力を込めた。核兵器による威嚇はウラジーミル・プーチン露大統領の常套手段だが、万が一にでも使用される事態になれば、その被害と影響は計り知れない。
オールジャパンでウクライナに車いす1000台を届けるプロジェクト「Japan Wheelchair Project for Ukraine」第1便のうち100台が寄贈されたキーウ近郊のイバンキフ村の社会サービス地域センターのナタリア・ネステレンコ所長(62)は「チョルノービリ原発事故の影響で多くの人が筋骨格系の障害に悩まされています」と語る。