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託児費用の無償化を一気に拡大...「育児支援」改革で、英経済は救われるか?
英国の育児支援団体coramによると、2歳未満の子どもを週25時間、保育園に預ける場合の年間平均費用は8000ポンド(約128万円)近い。英国の就学年齢は5歳なので、生後9カ月から就学前の子どもを持つ働く親が無償で育児支援を受けられるようになる。ユニバーサル・クレジットを支給されている親は前払いを受けられ、支給額も引き上げられる。
高技能・高賃金経済を目指すため、インド系の両親を持つスナク首相は18歳までに全生徒は数学を学ぶという構想を掲げる。「ゼロ」を発見したのはインドの数学者で、インドの小学生は1から19までのかけ算を瞬時に答えると言われる。経済協力開発機構(OECD)生徒の学習到達度調査(PISA)で英国の数学ランキングは17位タイと、それほど高くない。
支援拡大が保育事業者を圧迫する恐れも
スナク政権は数学教育に加えて、技術系資格のTレベル、雇用主の求めるスキルを身につけるスキルズ・ブートキャンプ、生涯学習支援制度を実施している。社会人になっても引き続き学習、再教育、スキルアップの機会を提供する仕組みだ。 50歳代以上を対象とした復職者支援プログラム「リターナーシップ」も用意した。
英国では何百万人もの労働者がコロナ後遺症など長期の健康問題や介護、あるいは早期退職する余裕があると判断したため働かなくなった。英国の失業率は3.7%だが、経済的に非活動状態になっている「隠れた失業者」を含めると真の失業率は12.7%に跳ね上がるという試算もある。
英シンクタンク、レゾリューション財団によると、今回の無償育児支援拡大は00 年の導入以来最大だ。働く親の数は 6 万人増え、多くの世帯の労働時間と生活水準が向上するという。中・高所得世帯が低所得世帯より多くの恩恵を受ける。無償育児支援時間の増加と合わせ、パートタイムで働く低所得者の所得を引き上げ、フルタイムで働くよう促した。
ユニバーサル・クレジットを利用する低所得世帯は育児支援金が前払いとなり就労への障壁が取り除かれ、請求可能な上限額も子ども1人の場合は月646ポンド(10万4000円)から951ポンド(15万2600円)に引き上げられる。働いた方が豊かになるというアメとムチの政策でスナク政権は労働力を増やそうとしている。
英シンクタンク、財政研究所(IFS)は無償育児支援の拡大策について「2歳の子どもたちがいて働いている平均的な世帯は育児支援の無償アクセス権を拡大することで週80ポンド(1万3000円)以上節約できる」と分析する。週30時間の育児支援を受ける親、複数の幼児を抱える親、ロンドンやイングランド南東部に住む世帯がより大きな恩恵を受ける。