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中国には制裁もHIMARSも効かぬ? 台湾有事に向け、デジタル人民元が抜け穴に
19年7月、中国人民銀行の王信研究局長は中国国内で開かれた学会でデジタル人民元発行の研究を承認したことを初めて公にした。20年4月には実証実験が深セン市など4都市で実施されることが明らかにされ、同年10月にはデジタル人民元発行に向けた法整備として人民銀行法改正法案が公表された。
中国が世界に先駆けてデジタル通貨に取り組む背景として、日本の財務省の藤田豊氏は「デジタル人民元」というコラム(昨年2月)の中で(1)中国ではデジタルトランスフォーメーションが急速に進んでいる(2)マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与、脱税、汚職防止など資金の流れを把握する必要がある(3)人民元の国際化──を指摘している。
今年、米アップルの「iPhone」に搭載されるオペレーティング・システム「iOS」やグーグルの「Android(アンドロイド)」向けデジタル人民元アプリのベータ版も登場。9月にはデジタル人民元の試行プログラムを広東、四川、河北、江蘇4省全域に拡大することが発表された。しかし同時に利用者の取引を監視できるようになるとの懸念が指摘されている。
最新鋭の衛星能力を構築
そもそも非中央集権的で政府や中央銀行から自由なはずのデジタル通貨は中国では中央集権的な人民支配のツールとして使われる。さらに「将来的には中国が現在ロシアのプーチン政権に適用されているような国際的な制裁を部分的に回避することも可能になるかもしれない。中国共産党はこの紛争から教訓を学んでいることは間違いないだろう」(フレミング氏)
中国がデジタル人民元を国際化すれば制裁を回避でき、西側が制裁をテコに中国の台湾侵攻を抑止できるか、重大な疑念が生じる。
北京は現在のGPS(全地球測位システム)を脅かすような最新鋭の衛星システムを構築している。「支配のための恐怖と欲望が宇宙のような新しい領域にどのように影響するかをも目の当たりにしている」(フレミング氏)。中国は北斗衛星測位システム(18年12月、サービス開始)を通じて航空機、潜水艦、ミサイルなどにもナビゲーションを提供している。
中国国民や企業に採用させ、世界120カ国以上への中国製輸出品に組み込ませるため、中国共産党はあらゆる手段を講じている。北斗衛星測位システムを使えば世界中の個人を追跡できるようになるのだ。
ウクライナではGPS誘導弾とM142 高機動ロケット砲システム(HIMARS)、多連装ロケットシステム(MLRS)の連携が戦争の流れを変えた。中国は衛星を破壊する強力な対衛星能力も構築している。衛星が戦場だけでなく、配車、出前サービスなど日常生活にいかに重要かを考えると将来の戦争は宇宙で決まると言っても過言ではない。
ウクライナ軍は敵の位置を正確に把握するため、通常の商業衛星データ(1日2回撮影)やさまざまなドローン(無人航空機)を使用しているとみられている。ロシア軍はウクライナ軍が使用できる商業衛星データにアクセスできない。ロシア軍の軍事衛星は数週間に一度しか宇宙から撮影できない。さらに経済制裁で衛星用の西側製先端部品が使えなくなった。