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首相も「もう無理」...反移民が燃え上がる「寛容の国」スウェーデンで極右政党が躍進
米シンクタンク、ブルッキングス研究所の調査では、1990~2000年代にかけ欧州諸国の移民規制が強化される中、移民に門戸を開放する政策は「スウェーデン例外主義」と呼ばれた。しかし2015年の欧州難民危機で門戸を開放したドイツとスウェーデンに難民が大挙して押しかけたことから「スウェーデン例外主義」は終わりを告げる。
同年11月、ステファン・ロベーン首相(当時、社会民主労働党)は「スウェーデンが今日のような高いレベルで難民を受け入れることができなくなったことは私にとって苦痛である。これ以上は無理。より多くの人々が他国で難民申請することを選択できるようにする。われわれには休息が必要だ」と音を上げた。16年、過去最大の移民16万3000人を受け入れた。
ギャング団の銃撃事件が激増
移民規制の強化で昨年、スウェーデンへの新規移民は9万人強まで減り、長期的には年10万人強で安定する見通しだ。米シンクタンク、ピュー研究所によると2016年当時でイスラム系移民の人口割合は8.1%。28年には12万6800人の子供が生まれ、これらの子供のうち3人に1人は外国生まれの母親を持つという。25~64歳の外国生まれの割合は現在の24%から30%に増える。
こうした急激な人口構成の変化が反イスラム、反移民の排外主義感情の背後にある。今年4月、デンマーク、スウェーデン両国の国籍を持つ極右政治家ラスマス・パルダン氏がイスラム教の聖典コーランを燃やすイベントを計画して、スウェーデン各地で抗議の暴動が起き、治安の悪化を改めて印象付けた。
銃撃事件は2016年、281件発生し、死者は36人。昨年の銃撃事件は344件で、死者は45人。今年はすでに273件の銃撃事件が発生し、死者は昨年を上回る47人に達している。10年の銃撃による死者は20人だったことを考えると、いかにスウェーデンの治安が悪化しているかが分かる。今回の総選挙でも銃撃事件とギャング犯罪の急増が主な争点となった。
移民2世、3世の若者がギャング団を結成し、麻薬取引に絡む銃撃事件が多発するようになった。スウェーデン南部の遊び場で母親と5歳の子供が銃撃を受けて負傷し、ショッピングモールでも銃撃事件が発生し2人が負傷している。スウェーデンの銃犯罪は欧州のどの国よりも速いペースで増加している。