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フィンランドの36歳女性首相が、独裁者プーチンの恫喝に「ひるまない」わけ
「3月13日は冬戦争(1939~40年)終結の記念日だった。私たちも当時、独立のために戦ったが今、ウクライナ市民も同じ状況に置かれている。戦争犯罪の責任者は裁かれることになる。冷戦後の秩序は崩壊している。フィンランドも安全保障を強化する方法を見極めなければならない」(3月15日、フィンランド議会で)
「ロシアからエネルギーを買うということは戦争に資金を提供していることになる」(3月25日、ロシア産天然ガス・原油・石炭への依存解消を協議したEU首脳会議後に)。ロシアはフィンランドの石炭輸入の95%、原油輸入の86%、天然ガス輸入の67%を占める。フィンランドはEUの中でもロシア依存度が高い国の一つである。
2008年ノーベル平和賞を受賞したマルッティ・アハティサーリ元フィンランド大統領はオスロでの授賞式で原体験を振り返った。「私も戦争に翻弄された子供だった。2歳の時、ヒトラーとスターリンが不可侵条約を結んだため、フィンランドとソ連の間で冬戦争が勃発した。私の家族は数十万の人々とともにビープリの町(現ロシア領のカレリア地方)を追われた」
クラスター爆弾の禁止条約に署名しないフィンランド
オスロでは授賞式の1週間前、不発弾による民間人巻き添え死が問題になっているクラスター(集束)爆弾の禁止条約の署名式が行われ、94カ国が署名した。フィンランドはその後も「国境を守るために不可欠」として署名を見送っている。ロシア軍が侵攻してきた場合、国民をいったん西部に退避させ、クラスター弾で反撃するというのが国防政策の一つだからだ。
米製の最新鋭ステルス戦闘機F35を64機、調達したのもロシアの侵略に備えるためだ。冬戦争とそれに続く継続戦争(1941~44年)を首相、大統領として戦ったリスト・リュティ(1889~1956年)はアドルフ・ヒトラーと手を結ぶ「悪魔の取引」をしてヨシフ・スターリンの侵略を退けた。救国の英雄リュティは戦後「戦争犯罪人」として裁きを受けた。
マリン氏をはじめすべてのフィンランド国民にはソ連を撃退した2つの戦争の記憶が生々しく刻まれている。フィンランドとスウェーデンのNATO加盟が実現すれば、バルト海周辺におけるプーチン氏の領土的野心は完全に封じ込められ、欧州の安全保障は一変する。欧州の強さではなく、弱さこそがプーチン氏の野心を誘惑してきたのだ。