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アストラゼネカ製ワクチンの公費接種、日本でもようやく承認 もっと早く認めていれば有観客の五輪もできたはずだが
WHOが今年2月に承認してから5カ月半、世界119カ国が承認済みのアストラゼネカ製ワクチン Dado Ruvic/Illustration/REUTERS
<今は、デルタ株の脅威にさらされている現役世代のワクチン接種加速化へ展開を急げ>
[ロンドン発]英オックスフォード大学が開発、英製薬大手アストラゼネカが製造する新型コロナウイルスワクチンについて、厚生労働省の専門分科会は7月30日、予防接種法に基づき公費で接種できる年齢を原則40歳以上とする案を了承した。公費接種が認められるのは米ファイザー、モデルナ製のm(メッセンジャー)RNAワクチンに続いて国内3例目だ。
チンパンジーのアデノウイルスをベクター(運び屋)に使うアストラゼネカ(AZ)製ワクチンの緊急使用が英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)で承認されたのは昨年12月。世界保健機関(WHO)が今年2月に承認してからすでに5カ月半が経過し、これまでに119カ国が承認済みだ。
AZ製ワクチンの公費接種の承認が遅れに遅れたのは、ワクチン懐疑主義が根強く、石橋を叩いてもなかなか渡ろうとしない日本人特有の慎重さの現れなのか。それとも航空自衛隊の戦闘機調達と同じで、戦略物資のワクチンも「対米従属」の壁があったのか。
いずれにせよ、瀬戸際まで追い込まれないと決断しないのが日本人だ。当初、60歳以上というナンセンスな案も取り沙汰されたが、40~50歳代の感染が拡大していることや全国知事会の要望を受けて、選択肢として残しておいたAZ製ワクチンの公費接種も認めざるを得なくなったというのが実情だ。
AZ製ワクチンを巡ってはフランスやドイツのいわれなき攻撃が続き、ごくまれに出る血小板減少を伴う血栓症のため、厚労省は5月に特例承認したが、公費接種は見送っていた。しかし世界中でワクチンが不足し、接種が進まぬ途上国が多い中、安全性も有効性もWHOの基準を満たすワクチンを選り好みするのは先進国のエゴ以外の何物でもない。
血小板減少を伴う血栓症の副反応の虚実
血小板減少を伴う血栓症の副反応についても、世界的な医学雑誌ランセットの査読前論文でファイザー製とAZ製の安全性は「それほど変わらない」と指摘されている。この研究では、スペインのカタルーニャ州でファイザー接種者94万5941人、AZ接種者42万6272人、コロナ感染者22万2710人、それ以外457万149人を比較した。
静脈血栓塞栓症の標準化罹患比(1人の人が一定年齢までに特定の病気に罹患する割合、罹患率を比較するための指標)は1.29だったのに対し、コロナ感染者では8.04にハネ上がった。それがファイザー接種者では0.9、AZ接種者は1.15に下がっていた。血小板減少を伴う血栓症の標準化罹患比は1.35、コロナ感染者では3.52。ファイザー接種者は1.19、AZ接種者は1.03とAZ製の方が低くなっていた。