コラム

メーガンの「激白」にも英王室にも冷淡なイギリス人──君主制廃止論が再燃

2021年03月10日(水)18時20分
英王室のメンバー。左からチャールズ皇太子夫妻、エリザベス女王、メーガン妃、ヘンリー王子、ウィリアム王子、キャサリン妃(2018年7月)

英大衆紙の世論調査によると、王室メンバーの支持率は軒並み低下(写真は2018年7月、バッキンガム宮殿にて) Chris Radburn-REUTERS

<英王室の人種差別を訴える衝撃的な内容にもかかわらず、イギリス世論の視線が2人に厳しい訳は......>

[ロンドン発]英王室を離脱したメーガン夫人とヘンリー公爵が米人気司会者オプラ・ウィンフリー氏のインタビューで長男アーチーちゃん(1歳10カ月)への「人種差別」を告発したことを受け、エリザベス女王は9日、「深刻に受け止め、家族としてプライベートに対処する」との声明を発表した。

2時間の特別番組はアメリカで1700万人、イギリスで1240万人が視聴した。この中でメーガン夫人は王室に守ってもらえず「これ以上生きていたくない」と自殺を考えたことや「アーチーが生まれる時、肌の色がどれだけ濃くなるかについての懸念と会話があった」ことを明かし、厳しい非難が一斉に王室に向けられた。

事態がこれ以上悪化するのを避けるため、エリザベス女王が出した声明は次の通りだ。「ハリー(ヘンリー公爵の愛称)とメーガンがこの数年味わった困難を知り、家族全体が悲しんでいる。提起された問題、特に人種の問題が懸念される」

「記憶はいろいろと変わるかもしれないが、非常に深刻に受け止め、家族としてプライベートに対処する。ハリーとメーガン、アーチーが愛する家族の一員であることに変わりはない」

メーガン夫人とヘンリー公爵の告発を「深刻に受け止める」とする一方で「記憶はいろいろと変わる」と何が事実かについては留保した。そして、これは君主制度や王室とは全く関係のない家族内の問題だと明確な一線を引いた。

世論調査はアメリカのほうが同情的

世論調査会社ユーガブ(YouGov)がアメリカの成人2104人を対象に実施した調査では、メーガン夫人とヘンリー公爵がウィンフリー氏のインタビューに応じたのは「適切」と答えたのは44%にのぼったのに対し「不適切」は20%。イギリスでは逆に「不適切」が47%、「適切」は21%だった。

アメリカでは2人に共感するが68%、他の王室メンバーに共感するは27%。58%がメーガン夫人の「人種」が他の王室メンバーの対応に影響したと回答した。一方、イギリスでは2人に共感するが29%、他の王室メンバーに共感するも39%といずれも低かった。

メーガン夫人を叩きに叩いてきた英大衆紙デーリー・メールの世論調査では支持率から不支持率を引いた「ネット支持率」はエリザベス女王64ポイント(2ポイント減)、ウィリアム王子62ポイント(7ポイント減)、キャサリン妃56ポイント(8ポイント減)。ヘンリー公爵は14ポイント(15ポイント減)、メーガン夫人はマイナス8ポイント(6ポイント減)と大きく下げた。

コロナ危機でも120億円荒稼ぎ

ヘンリー公爵は父チャールズ皇太子のコーンウォール公爵領からの利益配分230万ポンド(約3億4700万円)は打ち切られたものの、母ダイアナ元皇太子の遺産約650万ポンド(約9億8千万円)を元手に王室離脱を強行した。

動画配信サービス、Netflixや音楽ストリーミングサービスのSpotifyとの複数年契約で8千万ポンド(約120億6700万円)以上を稼いだ2人は1470万ドル(約16億円)で米カリフォルニア州サンタバーバラに豪邸を購入した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相「国益考え対応」、米関税めぐる自民部会 

ビジネス

インド卸売物価、3月は前年比+2.05% 4カ月ぶ

ビジネス

英労働市場に減速の兆し、企業の税負担増を前に 賃金

ワールド

ウクライナ和平案、米国との合意は容易ではない=ロシ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトランプ関税ではなく、習近平の「失策」
  • 3
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 6
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story