コラム

イギリス3度目のロックダウン、変異株の猛威が浮き彫りに

2021年01月05日(火)11時00分

2年連続で一般中等教育修了試験(GCSE)や大学入学資格試験(Aレベル)に大きな影響が出るのは避けられなくなってきた。ジョンソン政権が最後の手段である学校閉鎖に踏み切ったのは変異株が子供にも大人と同じように感染しやすいことが分かっているからだ。

ジョンソン首相は保守党強硬派から「経済を優先しろ」と激しく突き上げられ、昨年3月には1回目の都市封鎖を実施するタイミングが遅れた。同年11月の2回目の都市封鎖も医療現場の声を無視して約1カ月で解除に踏み切った。コロナ対策では1週間の遅れが命取りになる。

英ポーツマス大学のキャサリン・キャロル・ミーハン教育社会学部長は「学校閉鎖は正しい判断だ。しかし遅くても日曜日か、先週に決断を下していれば学校側は準備ができた。今回のように12時間前の午後8時に教師にテレビ演説で通知するようなやり方は受け入れらない」と批判する。

キングス・カレッジ・ロンドンのデイム・ティル・ウィクス教授(精神医学)も「学校閉鎖は子供、教師、保護者らすべての人に影響を及ぼす。教育、家族の収入、メンタルヘルス面でも支障が出る。しかし閉鎖は感染を遅らせ、NHSを救うためには正しい判断だ」と話す。

ワクチンの効き目はいつまで

ホームコンピューティングへのより良いアクセスを確保するためインターネットを安価に利用できる環境を作ることが不可欠だ。都市封鎖が長期化するとメンタルヘルスに悪影響を及ぼす恐れがあるため、孤独などの問題を解消する必要があるという。

医学研究を支援する英団体ウェルカム・トラストのジェレミー・ファラー代表は「都市封鎖が直ちに必要とされる段階に達した。変異株は深刻な脅威であり、既存の社会的距離政策を迅速に乗り越えられるかをわれわれは目の当たりにしている」と語る。

「イギリスでは2種類のワクチン接種が始まり、接種を受けた人は100万人を超えたが、これらのワクチンによって提供される免疫がどれだけ続くのか必要な証拠はない。次の冬に向け2回目のワクチン接種のタイミングはいつが最適なのか大規模な試験を開始する必要がある」

「自国だけに焦点を合わせるのは国益ではない。南アフリカの変異株は大きな懸念事項であり、世界は新たな変異株の出現に備える必要がある。今後数年間、世界的な監視と対応を継続しなければならない。ある国を置き去りにすると、私たち全員がリスクにさらされ、日常に戻るまでますます長い時間がかかる」

こう言ってファラー代表はグローバルな対応を呼びかけた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米1月CPI、前年比2.4%上昇 伸び鈍化し予想も

ワールド

米・ロ・ウクライナ、17日にスイスで和平協議

ワールド

米中外相、ミュンヘンで会談 トランプ氏の訪中控え

ビジネス

EU貿易黒字が縮小、米関税と中国の攻勢が響く
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 6
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 7
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    やはりトランプ関税で最も打撃を受けるのは米国民と…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story