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「人口減少」×「人工知能」が変える日本──新時代の見取り図「金融機関編」
ビジネスのAI化は3段階のステップで進む
第1段階は単純業務の自動化である。現在、メガバンクが進めているのは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる手法である。
これは、業務をあらためてシステム化するのではなく、既存のシステム上の操作をソフトに覚えさせ、一連の業務を自動化していく手法である。簡単に言ってしまうと、エクセルのマクロ機能に近いものだが、これを大規模に実行する様子をイメージすればよい。定型業務を自動化するだけでも、実はかなりの人員削減が可能となる。
第2段階は、いよいよ本格的なAI活用のフェーズである。従来の融資業務は、取引先の信用情報などを行員が分析し、都度、融資の可否を判断していた。スコアリングなど、審査業務をシステム化しようという動きはあったが、属人的な日本の商慣行が邪魔をしてなかなかうまくいかなかった。
AIをフル活用すれば、こうした作業の多くを実用的なレベルで自動化できる。この段階まで来ると、商業銀行における業務の大半を機械が実施することも不可能ではなくなってくる。
だがここで問題となるのがAIの分析に必要なビッグデータである。いくらAIを活用するといっても、従来と同じ取引先データを人海戦術を使って集めていたのでは、業務の自動化は不可能である。つまり、新時代の金融ビジネスにおいては、他業種からの参入余地が出てくるのだ。
純粋な商業銀行という形態はいずれ消滅する?
第3段階は、他業種からの参入による金融サービスの多様化である。融資業務がAIで実現可能ということは、AIの技術さえあれば、金融以外の業種であっても融資ビジネスに参入できることを意味している。しかも、実業をベースにした企業の場合、AI化に不可欠となる精緻なビッグデータをすでに持っているというケースも多い。
リクルートは2017年、旅館を対象とした融資ビジネスに参入したが、同社は「じゃらん」という宿泊施設の予約サイトを運営しており、各旅館の予約状況を把握している。ECサイト各社が、自社のデータを使った融資ビジネスに参入するのは時間の問題といわれている。ECサイトは商品やお金の流れに関する詳細なデータを持っているので、AIを活用することで、銀行より精度の高い融資を実現することも不可能ではない。
そうなってくると銀行は融資ビジネスにおいて必ずしも有利な立場とは言えなくなる。これに加えて電子マネーの普及によって決済業務のオープン化も進んでいる。メガバンクは、伝統的な商業銀行業務から徐々に撤退し、投資銀行業務やプライベートバンク業務など、より付加価値の高いビジネスへとシフトしていくだろう。
これらの分野は、仮にAI化が進んでもフェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションがモノを言う世界だが、一連の業務に従事するためには高いスキルが求められる。高付加価値業務を担当する行員として銀行に残れるのは、ごく一部にとどまるだろう。