コラム

人間の敵か味方か...グーグル検索を置き換える? 今さら聞けないChatGPTの正体

2023年06月02日(金)15時00分
対話型AIのイメージ

PHOTO ILLUSTRATION BY JONATHAN RAAーNURPHOTO/GETTY IMAGES

<便利で誰でも使える対話型AIは、いずれ人々の思考や行動を支配する? ChatGPTなどの生成AIとわれわれはどう付き合うべきか>

チャットGPTをはじめとする対話型AI(人工知能)が急速に社会に普及している。AIの活用による生産性向上が期待できる半面、AIに依存することのリスクを指摘する声も出ている。

検索エンジンに代表されるネット上の各種サービスは、地球上のほぼ全員が想定利用者という究極のマス・ツールであり、その仕組みや品質よりも、いかに簡単に利用できるかというところで勝負が決まってしまう面がある。ひとたび標準となったサービスは社会のあらゆる面におけるインフラとなるため、人々の思考や行動が特定のツールに支配されてしまうリスクが伴う。

チャットGPTが人間をどう変えるのかについて考察するためには、そもそもチャットGPTがどのような仕組みで人間のような受け答えをしているのか理解しておく必要がある。チャットGPTはAIの1つであり、AIという名前を聞くと、人間と同じように「思考する」コンピューターという印象を持つかもしれない。だが現実は、そのイメージとはだいぶ懸け離れている。

チャットGPTは基本的に単語と単語の前後の関係性から、次に来る単語を予測するという形で文章を生成しており、一貫した価値観や認識というものがあって文章を生み出しているわけではない。今、筆者は単語と単語の関係性から次の単語を予測すると述べたが、より厳密に説明すると、単語ではなく、単語をもう少し細かく分割したトークンという単位を用い、トークンとトークンの関係性から文章を生成する仕組みになっている。

英語の場合、大抵、1単語が1トークンだが、そのパターンに当てはまらないこともある。例えばrecallというような単語は、より細かい複数のパーツから構成されていると考えられるので、この場合には、1単語=1トークンではなく2トークン以上の細かい単位として分割認識されることがある。だが一般的には、単語と単語の関係性から次の単語を予測すると考えて差し支えないだろう。

ではチャットGPTは単語と単語の関係性をどのように把握するのかというと、学習目的で入力された大量のデータからの推測ということになる。つまりチャットGPTは、大量に入力された文章から無数の単語と単語の関係性を把握し、それに基づいて「それらしい」 文章を生成しているので、入力するデータあるいは文章によってチャットGPTが生成する文章のレベルも決まってくる。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story