コラム

河村市長の金メダルかじり問題、「モラルの欠如」どころではない深刻さ

2021年08月17日(火)21時02分

所有権という概念をうまく消化できないせいで多くのビジネスが滞っており、経済活動にも大きな影響が及んでいる。日本では家主よりも借り主のほうが権利が強く、家賃を滞納しても、家主は簡単に立ち退きを強制できない。

一見すると立場が弱い借り主を保護しているように見えるし、戦災による住宅不足が深刻になった終戦直後などにはそうした役割も果たしていたが、その後は弊害のほうが大きい。

一部の家主は家賃を滞納した借り主に合法的な退去を求められないので、外出中に勝手に鍵を換えたり、滞納しそうな人(高齢者や低所得者)には最初から家を貸さないといった暴力的な措置を講じている。これでは低所得者から搾取するような悪徳事業者が得をして、善良な家主が損失を被ってしまう。借り主を守るどころか、かえって借り主の人権侵害を誘発しているとも言えるだろう(2000年から定期借家制度が導入されたがあまり普及していない)。

差別問題がなくならないのも自然権の概念が希薄であることが原因であり、所有権の話と同根と言ってよい。一連の問題をモラルやデリカシーといったレベルの議論にとどめておくべきではない。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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