給料前払い制度の急拡大が意味すること
以前から給料を前借りする浪費体質の人は一定数存在していたはずだが、生活を破綻させることなく何とかやりくりできていた。その理由は、前払いに対応する便利なシステムがなかったからではなく、賃金の絶対水準が高かったからである。
日本の労働者の平均年収は20年前には420万円もあったが、現在は360万円にまで下落している。ここ数年は横ばいが続いているが、物価が上昇しているので実質的な賃金はやはり下がっている。前払いを多用する社員の中には過剰消費体質の人もいるだろうが、本当に生活が苦しいので、やむを得ず利用しているというケースも多いはずだ。
日本の場合、多くの労働者が一律で月給制となっているが、これはむしろ特殊なケースといってよい。戦前の日本ではホワイトカラーは月給制で、ブルーカラーは日給制というのが標準的だったし、米国では、管理職と一般労働者で支払い体系が異なっている。管理職以上は月2回、一般労働者は毎週というパターンが多い。
日本は太平洋戦争による国家総動員体制の下、月給制が提唱され、多くの企業がこの制度に移行した。これが戦後も継続したのが現在の支払い体系である。月給制も年功序列や一斉昇給などと同様、戦争が生み出した副産物といってよいかもしれない(いわゆる1940年体制)。
日本でも週払いの賃貸住宅が増えてくる?
最大の問題は、月払いを基本としたシステムが今の経済状況に合わなくなっていることである。月に1回しか給与を支払わないという制度は、一カ月間、余裕を持って生活できるだけの賃金水準が確保されていなければ成立しない。
日本企業は終身雇用制度を維持するため、産業構造の変革よりも人件費の圧縮を優先してきた。だが、一部の労働者は月給制では生活できない状況にまで追い込まれている可能性がある。特に非正規社員は正社員と比較して給与水準が圧倒的に低く、一部の労働者は資金繰りが厳しくなっているはずだ。
つまり、給与の前払いシステムが拡大しているということは、日本の労働市場における階層構造化が顕著になっていることの裏返しでもある。安易な消費に走っているといった社会風潮の話としては捉えない方がよいだろう。
今後は労働者の階層化がさらに進みそうな状況となっている。政府は一部のホワイトカラー社員について、労働時間に関わらず賃金を一定にする「ホワイトカラーエグゼンプション」制度の導入を検討している(2017年秋の臨時国会が冒頭で解散されたので、今通常国会で提出される見込み)。今のところ1075万円以上の高度プロフェッショナル人材が対象とされているが、いずれこの金額が下がってくると指摘する専門家は多い。
最終的には、高額の年俸を取る一部の高付加価値社員と、そうでない社員の二極分化が進むことになるだろう。労働者の階層化がさらに顕著になるのだとすると、賃貸住宅の家賃体系も変わるかもしれない。
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