コラム

実は福祉大国アメリカ 予算教書があぶりだした意外な素顔

2017年06月06日(火)12時20分

教書ではメディケイドやフードスタンプの給付基準を見直すことに加え、オバマケア(医療保険制度改革)の見直し、学生向けのローンの見直しなどを通じて10年総額で1.3兆ドルの削減を見込んでいる。このほか政府機関の統廃合などコスト削減を行い、合計で3.6兆ドルの財源を確保する。低所得者への所得再配分が減少することによって消費の落ち込みも懸念される。

個人消費の冷え込みで景気にマイナスリスク

この中で特に影響が大きいと考えられるのが、低所得者向け支援の削減である。日本と異なり米国の低所得者の消費は各種の公的支援策に依存する部分が大きい。1.3兆ドルの削減が実施されると、低所得者層の所得が毎年1300億ドル(約15兆円)減少することになるが、これだけでも米国の国内総生産(GDP)の0.7%に相当する金額である。

支援を受けられなくなった人は、他の支出を切り詰めたり、親類などに援助を求める可能性が高く、場合によっては、他の世帯の支出までも抑制してしまう。米国経済は旺盛な個人消費がすべての原動力になっている現実を考えると、一連の福祉予算削減は、景気にマイナスの影響を与えるリスクがある。市場原理主義一辺倒というステレオタイプな米国像からは想像しにくいが、これも米国の一つの側面といえる。

現実には減税規模を縮小し、国債の増発を行うことで財源を確保するシナリオがもっとも濃厚だろう。この場合、当初イメージされていたほど米国景気は拡大しないが、現在の成長ペースは維持される可能性が高い。減税による中間層以上の消費拡大と、福祉削減による低所得層の消費低迷とのバランスをうまく取ることが求められる。

【参考記事】オバマは二枚舌で口先だけ

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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