コラム

トランプ政権誕生で2017年は貿易摩擦再来の年になる?

2017年01月10日(火)17時24分

Mark Blinch-REUTERS

<トランプ政権における経済チームの顔ぶれをみると1980年代の対日貿易交渉を彷彿させる。米国の景気は加速する可能性が高いが、果たして日本など諸外国はこのメリットを享受できるのか> (写真は1月9日、北米国際自動車ショーで講演をするトヨタ自動車の豊田章男社長。日本の自動車メーカーが米国での現地生産化を推し進めたのは貿易摩擦がきっかけだった)

 トランプ政権が誕生することで、全世界的に景気拡大への期待が高まっている。トランプ氏が主張する大規模なインフラ投資と大型減税が実現すれば、米国の景気は加速する可能性が高いが、日本など諸外国がこのメリットを享受できるのかは微妙なところだ。

 トランプ政権における経済チームの顔ぶれは1980年代の対日貿易交渉を彷彿とさせる。今回のターゲットは日本ではなく中国ではあるものの、トランプ氏がトヨタを名指しで批判するなど、日本にも影響が及ぶ可能性は否定できない。2017年の経済は良くも悪くも米国に振り回される形となりそうだ。

トランプ氏のシナリオ通りなら日本の製造業には追い風だが

 トランプ次期大統領は経済政策に関して、大規模なインフラ投資と減税という2つの大きな公約を掲げている。インフラ投資の規模は民間も含めて総額で1兆ドル(約116兆円)とも言われているが、10年かけて実施するということなので、単純平均すると1年あたり約1000億ドルの新規投資となる

 米国内のインフラは1960年代から70年代にかけて整備されたものが多く、老朽化が進んでいる。この規模の投資が継続的に実施されれば、古いインフラは刷新され、今後の成長を加速させる可能性が高い。これに大型減税が加わることで景気はさらに拡大するだろう。

 これらの政策を実現するためには議会との協調が不可欠だが、トランプ氏と大統領の椅子を争ったクリントン候補もインフラ投資を主張していたことを考えると有権者からの期待は大きい。何らかの形でインフラ投資と減税は実行される可能性は高く、少なくとも市場はそれを前提に動き始めている。

【参考記事】トランプ新政権で米国は好景気になる可能性が高い

 トランプ氏のシナリオ通りに進めば、米国市場で事業を展開する日本メーカーにとっては追い風となるが、多くの関係者が指摘する通り、最大の懸念材料は保護貿易主義の台頭である。トランプ政権の経済運営が外国企業にとって厳しいものになることは、経済チームの顔ぶれを見ると容易に想像できる。場合によっては1980年代の日本が経験したような貿易摩擦が再燃する可能性がある。

そもそも貿易不均衡の是正は経済を成長させるのか?

 トランプ政権の経済政策で大きな目玉となっているのは、新設される「国家通商会議」である。米政府には安全保障分野の司令塔となる国家安全保障会議(NSC)、NSCの経済版である国家経済会議(NEC)という組織がある。トランプ氏はこれに加えて、通商政策の司令塔となる国家通商会議(NTC)を新設するとしている。

 国家通商会議は、通商政策に関する基本戦略を大統領に提言する組織で、国内の失業者対策や製造業の復活を意図したものといわれる。

 この国家通商会議のトップに就任するのがピーター・ナバロ氏である。ナバロ氏はトランプ氏の経済政策を取りまとめた中心人物の一人で、貿易不均衡に関する対中強硬派として知られる。これに加えて商務長官に起用されるのが、同じく対中強硬派で知られる著名投資家ウィルバー・ロス氏である。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

東アジア・太平洋地域、今年の成長鈍化へ 中東紛争が

ワールド

米軍、イランが完全に合意履行するまで周辺に展開=ト

ワールド

原油先物9.5億ドル相当売却、米イラン停戦発表の数

ビジネス

日本の財政中長期試算、改善の余地ある=片山財務相
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 4
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    キッチンスポンジ使用の思いがけない環境負荷...マイ…
  • 7
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 8
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 9
    アメリカとイランが2週間の停戦で合意...ホルムズ海…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story