コラム

日本は「幸福な衰退」を実現できるのか?

2016年11月01日(火)16時49分

高齢者が多く、資源がない日本はアルゼンチンになれない

 では、日本はアルゼンチンのように衰退を受容し、相応の生活を楽しむ国になれるのだろうか。残念ながらそれは難しいだろう。

 アルゼンチンは、公的年金の運用を市場に委ね、その後、運用の失敗から再び公営に戻すという措置を行っている。公的年金をめぐる扱いで揺れている日本とよく似ているが、アルゼンチンの年金が完全に破たんしないのは、高齢者人口が少ないからである。日本の65歳以上の人口は3割に近い状況となっているが、アルゼンチンは約1割と低く、金額は少ないながらも公的年金は高齢者のほとんど全員をカバーしている。

 日本の場合、資源がほとんどなく森林が国土の7割を占めるという特殊な環境であり、大規模農業には適していない。減少が進んでいるとはいえ1億人以上の人口を抱える大国であり、しかも高齢者の割合が極めて高い。現状の生活水準を維持するだけでも莫大なコストがかかる。基本的に貿易・工業立国であり、そうである以上、グローバルな競争環境の中で高い付加価値を生み出していくしか残された道はない。

 日本がこの先、ゆっくりとした受容プロセスにシフトし、緩慢な衰退の中でそれなりの幸福感を追求していくというシナリオを描くことは残念ながら難しそうだ。日本には人材という資源しかないという原点に立ち返る必要があるだろう。ちなみに冒頭で紹介した世銀のビジネス環境ランキングにおいてアルゼンチンは190カ国中116位であった。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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