トランプ「対中カード」外交で捨て駒にされる台湾
日本は中台対立をなだめる方向で動くべき Pichi Chuang-REUTERS
<再統一を迫る中国と武器供与で対抗するアメリカ――住民が米中対立の犠牲にならないために日本ができること>
台湾というと、日本もアメリカも「対中カード」の1つぐらいに考えがちだ。だが、ここには約2400万人が住み、GDPも約6000億ドルと、スウェーデンを上回る経済規模だ。
スマホの半導体チップの大半を握る米半導体大手クアルコムの生産を請け負うのは台湾の大企業、台湾積体電路製造。16年に日本のシャープを買収したのは鴻海精密工業だ。OEM(相手先ブランド名による生産)から出発したエイサーは世界的なパソコンメーカーとなった。
92年、中国が外資を優遇する政策を打ち出すと、台湾と香港の企業がなだれ込んだ。今では台湾企業は対岸の中国・福建省を皮切りに深圳、重慶、成都などに工場を展開。鴻海は子会社の富士康(フォックスコン)の名で、中国各地の工場で数十万人もの労働者を雇い、米アップルの製品を組み立てている。
台湾はグローバルなモノづくりチェーンのハブであり、しかも選挙で政権が交代する自由民主主義社会だ。台湾が国家かどうかの議論を尻目に、住民は台湾人というアイデンティティーと、高度に整備された行政機構を持っている。
外省人も「台湾人」意識
この台湾を使って、トランプ米大統領は中国とのけんかをしようとしている。アメリカは79年、中国と外交関係を樹立したときに、中国の要求で「一つの中国」原則を認め、台湾と断交した。日本も72年に同じことをしたが、米議会はほぼ同時に台湾関係法を制定。台湾有事における防衛を約束した。それでもアメリカは中国を刺激するのを恐れて、政府同士の直接交流や兵器売却を極力抑えてきた。
トランプはそのタブーを平気で破る。大統領就任の直前、16年12月に蔡英文(ツァイ・インウェン)総統からの電話をあえて受け、緊密な関係を維持することを確認した。中国との関係で、台湾をカードとして使う姿勢を明確にしたのだ。
これまで親中派に抑えられてきたアメリカの親台湾勢力は勢いづき、政府高官の交流制限撤廃、米海軍艦艇の台湾寄港再開、潜水艦建造への支援・参入と次々にタブーを破壊していく。昨年6月、アメリカ代表部である米国在台協会が台北で新庁舎の落成式を行った。これは在北京の米大使館と同じ規模に造られている。
中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は21年の中国共産党結党100周年までに台湾を再統一するというもくろみがあるとみられている。そこにけんか外交を身上とするトランプが割り込んできて、事態はエスカレートしている。
昨年7月には米海軍駆逐艦が2隻、11年ぶりに台湾海峡を通航し、9月には台湾へのF6戦闘機などの部品供与を決めた。これに対して習は今年1月2日、台湾問題で演説。平和的統一への構えを示しつつも、武力使用の選択肢は捨てないと述べた。
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