コラム

消費低迷の特効薬は消費税減税だ

2016年03月02日(水)17時25分

安倍晋三首相が言った「リーマン・ショック級の出来事」は目前にある? Thomas Peter-REUTERS

 総務省から2016年1月の家計調査の結果が公表された。二人以上の世帯を対象とした結果をみると、実質消費支出は前年と比べて3.1%減、2015年12月と比べて0.6%減とさえない動きが続いている。

 実質消費支出から世帯規模(人員)の変動の影響や、人口の高齢化の影響を除いて推計される消費水準指数(季節調整済)の動きをみても、2016年1月の結果は前月比1%弱の増加であって、水準は2015年10~12月期の平均値にも届いていない。2014年4月以降家計消費は停滞したままL字型のような形で推移し、2015年9月以降さらに減少傾向にある。2016年1月の持ち直しの動きも鈍いと言えるだろう。

 以上は商品を購入する家計側から見た消費の動きだが、売り手側からみた消費もさえない動きを続けている。

 経済産業省「商業動態統計速報」と総務省「消費者物価指数」から小売業実質販売額の動きを試算すると、2016年1月は前月比0.8%の減少となり、2015年10~12月の平均を1.8%下回るという結果となっている。業態別に試算した結果をみていくと、コンビニ実質販売額は緩やかながら堅調な増加を続けるものの、スーパー実質販売額は前月とほぼ変わらず、百貨店実質販売額は前月比4%を超える落ち込みとなった。売り手側から見た消費の動きにはインバウンド消費の影響も含まれているが、それを考慮に入れても落ち込みが確認できるのが1月の結果だ。2015年に入り、百貨店実質販売額が低下基調にあることは心配な動きだ。

 家計消費の趨勢は、商品を購入する買い手側と商品を売る売り手側の双方の統計の動きを加味して推計され、その結果は消費総合指数という形で内閣府から公表されるが、2016年1月も2015年に引き続き家計消費の動きは低調という結果に終わるだろう。

消費の底割れ、リーマン・ショック以来

 前回のコラムで指摘したとおり、2015年10~12月期のGDP統計から得られる民間最終消費の動きは、統計的に見て2002年1~3月期から2012年10~12月期における前期比0.2%増のトレンドから有意に下ぶれたことを確認させる結果となった。図表で見るとわかりやすい。青い実線は家計最終消費支出の実績値、黒い点線は2002年1~3月期から2012年10~12月期のデータから計算した傾向線(トレンド)、二つの赤い点線で囲まれた部分は、家計最終消費のトレンドが統計的に成り立ちうる範囲(95%信頼区間)を示したものである。

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プロフィール

片岡剛士

三菱UFJリサーチ&コンサルティング、経済・社会政策部主任研究員
1972年生まれ。1996年慶應義塾大学卒業後、三和総合研究所入社。2001年慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了、2005年より現職。早稲田大学経済学研究科非常勤講師、参議院第二特別調査室客員調査員、会計検査院特別研究職を兼務。専門は応用計量経済学、マクロ経済学、経済政策論。著作に『日本の「失われた20年」――デフレを超える経済政策に向けて』(藤原書店、第4回河上肇賞本賞受賞)、「日本経済はなぜ浮上しないのか アベノミクス第2ステージへの論点」(幻冬舎)など多数

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