- HOME
- コラム
- Edge of Europe
- イギリスはすっかり「刃物社会」になった......…
イギリスはすっかり「刃物社会」になった......あまりに多発するナイフでの死傷事件
2021年はひどい年で、ティーンエイジャーの殺人被害者は30人にのぼり、そのほとんどが刺殺だった。どうやら、急増したのは新型コロナのロックダウンが終わったのと関係しているようだ。自宅待機中にくすぶっているように見えていた数々の対人トラブルが、「通常の」生活が再開されるや殺人事件の増加につながった。
2023年にロンドンで殺害された21人のティーンエイジャーのうちでは、18人が刺殺だった。死者数が減少した理由の1つは、ロンドンの各病院が、度重なる経験の蓄積により刺傷の治療技術が向上したことだと聞いて、愕然とすべきなのか喜ぶべきなのか、僕は戸惑っている。
幸い、僕の通りで刺された16歳の被害者は、一命を取り留めた(だが何度も刺されて重傷を負った)。幸運にも警察は数時間のうちに20歳の加害者を逮捕できた。僕の家のすぐそばで人が誰かを殺害しようとしていたという恐怖は、ほんの少しだけ和らいだ。
刃物事件は、暴力事件が減少しつつある近年の社会の流れに逆行している。僕自身はといえば、かなり危険な時代に育った。1980年代と90年代は、けんかも強盗事件も多く、サッカーでは暴徒フーリガンも深刻な問題だった。
10代の頃に僕は、一度も話したことすらない人に、いきなり横から不意打ちパンチを受けたことがある。彼の「動機」は、以前にどこかのパーティーで僕の学校のグループとけんかになったことがあり、その報復ということらしかった。また別の時には、瓶を頭に向かって投げつけられたこともあった(頭に当たらず、壁にぶつかった)。地元の街で退屈を持て余していた若者グループの前をたまたま夜遅くに通った時に起こった出来事だから、これは単に悪ふざけだったと思う。
他にも、地元のギャングに追いかけられ、車を運転していた通りすがりの人が事態を察して乗せてくれたために逃げ切れたこともあった。あの時、危険度を天秤にかけたことを覚えている。見知らぬ人の車に乗るか、7、8人の攻撃的な少年たちに捕まるか。
今やカッターから「ゾンビ」ナイフへ
それでも30年前は、刃物で刺される心配はそこまで大きくなかった。パブでは時々、グラスを即席の武器にして殴りつける「グラッシング」が発生していた。ひどいけがや傷になるが、死亡することはごくまれだった。
ナイフを持ち歩く場合でも、「刺す」よりも「切る」ために使うことが多かった。どちらも悪質だが、刺すほうが著しく重傷になる。
ある時点から刺すのが常態化し、「軍拡競争」が始まった。ナイフを持ち歩くと言えば以前はカミソリやカッターナイフを指したが、今では「ゾンビ」ナイフを意味する。これは、致命的な重傷を負わせることだけを目的とした武器だ。恐ろしい考えだが、口げんかがしょっちゅう刃物事件に発展する文化は、武器を携帯して、刺される前に刺してしまえという雰囲気を生み出す。
昨年のクリスマス数週間前のある金曜日、僕は店に行く途中で警察の金属探知機をくぐる羽目になった。電車を降りて街に入るところで皆がくぐるように設置された可動式の金属探知機で、街行く多くの浮かれた人々が通り抜けていた。その探知機は、煩わしく時間も要するボディーチェックをせずともナイフを検知できる。もう1つの気が重い事実は、致命的な暴力事件がクリスマスや新年などのお祝いムードで「善意に満ちた時期」に増加しやすいことだ。
僕は以前にも、たとえばノッティングヒル・カーニバルなどで同じような探知機を目にすることがあった。それでも地元の小さな町でこれを経験するとは驚きだった。残念ながら、わが街にまで探知機を設置するのは「やりすぎ」だったとは思えない。もしかすると警察は、ちゃんと何らかの対策をしていますよと市民を安心させたいのかもしれない。

アマゾンに飛びます
2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
政治改革を「いかにもそれやらなそう」な政党がやるとどうなるか 2025.02.15
「嫌な奴」イーロン・マスクがイギリスを救ったかも 2025.02.07
煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄道網が次々と「再国有化」されている 2025.01.22
2025年、ついにオアシス再結成......その真実を語ろう 2025.01.08
土地持ち農家は高額な相続税を払え...英労働党の新方針が農村部で大不評 2024.12.27
シリアに散った眼帯のジャーナリスト...アサド政権崩壊で思い返したいこと 2024.12.12
バックパックを背負った犬が歩くたび、自然が蘇る未来 2024.12.06
-
東京都港区/外資系企業での一般事務・庶務業務
日本アスペクトコア株式会社
- 東京都
- 月給21万7,200円~
- 正社員
-
「セールスコンサルタント」日系/外資TOP企業の人事/経営層を相手に採用戦略を提案/人材サービス「紹介/教育/研修」
株式会社リーディングマーク
- 東京都
- 年収600万円~800万円
- 正社員
-
港区・虎ノ門ヒルズ/外資系大手企業内での一般事務/資料のスキャニング、保管
日本アスペクトコア株式会社
- 東京都
- 月給21万7,200円~
- 正社員
-
外資インフラベンダー PM/システムエンジニア/詳細設計/サービス関連の会社/Windows
株式会社スタッフサービス
- 東京都
- 月給23万5,000円~55万円
- 正社員