コラム

弱者を弱者に甘んじさせないために

2015年08月25日(火)17時45分

 先週末の2日間は地元京都では「地蔵盆」でした。京都の町のあちこちに小さな祠があるのに気付かれた方も多いはず。寺院などに祀られているお地蔵様ではなく、こうした町内にあるお地蔵様を毎年この時期にお祭りするのですが、この日の主役は実は子供たち。近世の頃からのコミュニティ内で支え合う共助が、現在では地域の子どもたちの健やかな成長を願う行事として残っています。

 我が町内会でも娘たちが産まれた時に名前入りの提灯を作ってくれまして、こうして地域の子どもたちの名前が書かれた提灯が毎年「地蔵盆」の会場を彩ります。お地蔵様にお坊さんがお経をあげるのが本来のメインイベントのはずですが、そのお地蔵様の前で子供たちはお菓子やおもちゃをいただいたり、灯篭にお絵かきをしたり、流しそうめんをしたりとイベントが盛り沢山。清掃から始まる準備も含め、地域の皆さんの尽力に頭の下がる思いですが、町内の老若男女が2日間の間に三々五々つどいますので、あらためて地域の繋がりを意識しますし、子供たちは地域でケアしていくという姿勢も強く感じるものです。

「地蔵盆」の時期だけに留まらず、地元コミュニティでは普段から我が家の娘たちをとても大切にしてくれまして、普段から「◯◯ちゃん、△△ちゃん」と気軽に声をかけ、地域の皆さんがさりげなく気に留めてくれています。子ども、老人、シングルペアレント、障がい者など、サポートの必要な人たちを共同体で受け入れ、支えていくのが当たり前との共助の意識が他と比べると格段に浸透しているとの印象を受ける地域でもあります。ワタクシが安心して米国の公文書館に出掛けたり、国内の地方講演に泊りがけで行けるのも家族の協力と理解があるのはもちろんなのですが、地域のサポートにも負う部分も非常に大きいのです。
 
 弱肉強食の最たる相場取引を長年のキャリアとしてきたワタクシが障がい者を始め弱者支援の話を取り上げると違和感を覚える方が多いようですが、過酷な世界に身を置いてきたからこそ配慮すべき部分(怠惰な人間を甘やかすことではありません)とそうでない部分がより明確にわかるということがあります。地域社会で暮らす中で感じるようになったこともありますし、そもそも社会的な弱者が救われなければ、その他も救われないとの発想が私の中にあります。

 自力でできるところまでは最大限に努力する自助、「地蔵盆」に象徴されるような地域で支える共助、そこから拡大して行政など公的に支える公助。自助だけでは限界があり、公助ではどうしても漏れが出てきてしまう――自助と公助のギャップを埋めるべく、その中間で柔軟に対応できるのが共助となるわけですが、この自助・共助・公助の発想はどれも重要で、経済の分野と切っても切れない話でもあります。

プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story