賃金格差の解消こそが女性の雇用を後押しする
雇用形態の多様化がすべて「悪」と言っているわけではありません。何を隠そうこのワタクシ自身も子育てをしながらこうして不定期に執筆活動に勤しめるのも、IT技術の革新のおかげですし、その時々のライフスタイルにも照らし合わせて仕事を選ぶことができるため。仕事の仕方に柔軟性を持てる、というのは本当に助かります。新規参入者として正規雇用での採用が狭き門でもパートタイムであれば目指す仕事に就け、後のキャリア・アップのための第一段階となる場合もあるでしょう。
しかしながら、それは十分な賃金が支払われればという前提があってこその話です。非正規化をすすめるならオランダやオーストラリアのように雇用者の権利を最低限守る法令をまずは国内で規定する、国際条約を批准するのが当たり前のことです。ILO条約は決して労働者を過度に守るために厳しく設定された水準ではなく、各国様々な状況に照らし合わせ、最低限これぐらいは守るべきというような低く設定された水準です。「同一労働・同一賃金」に代表されるような最低限の権利を考えることなく、非正規などの制度だけ日本のように推し進めれば弱者にしわ寄せがいくのは目に見えています。それが長らく日本経済全体の停滞にも繋がっていることは看過できないという点もILO報告の内容とともに前回お伝えした通りです。
ちなみに、米国はこの175条約は批准していませんが、つい最近はカリフォルニア州の話題が伝わってきているように、最低賃金を15ドル(1ドル120円換算で時給1800円)とする条例が昨年来多くの自治体で可決されています。日本の最低賃金の全国平均18円の答申がありましたが、この通りの引き上げとなっても全国平均は798円。米国の1800円とは倍以上の開きがあります。連邦国家としてILO条約を批准してなくとも、州ごとに対応しているとも言えます。米国社会の中での格差はもちろん、酷いものですが、それを是正する方向で実際に動き出しています。
アベノミクスがスタートしてから女性の就業数は確かに増えています。が、問題はその働き方でしょう。2014年度の男女別雇用状況(カッコ内は対前年比)を見ると、
・男性:正規労働者2259万人(マイナス8万人)、非正規労働者630万人(プラス20万人)
・女性:正規労働者1019万人(マイナス8万人)、非正労働者1332万人(プラス36万人)
となっています。
女性就業者の56.7%が非正規労働者であり、非正規労働の男女別で見れば67.9%が女性です。高賃金の正社員の男性が市場から退場する中で、その埋め合わせは低賃金労働の女性がしている傾向がうかがえます。最近では補助労働だけでなく基幹パートなどもありますが、キャリア・アップをはかれるような、あるいは能力を発揮できるような仕事にどれほどの女性が就いているのか、応分の賃金を確保できているのか、甚だ疑問です。
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